研究課題/領域番号 |
16K15728
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石田 晋 北海道大学, 医学研究科, 教授 (10245558)
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研究分担者 |
西村 紳一郎 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (00183898)
野田 航介 北海道大学, 医学研究科, 准教授 (90296666)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 眼細胞生物学 |
研究実績の概要 |
近年、核酸、蛋白質に続く第三の鎖状生命分子として糖鎖分子が注目されており、糖鎖構造の変化が蛋白機能に影響を与えることが明らかとなっている。また、糖尿病網膜症の病態には血管内皮増殖因子(VEGF)が関与していることがわかっており、その受容体であるVEGFR-2上の糖鎖構造を明らかにすることは糖尿病における疾患関連糖鎖の発見に繋がり、新規治療法の開発に繋がる可能性がある。過去に我々は糖尿病網膜症患者の硝子体中でシアル酸含有N型糖鎖が増加することを報告したが、本研究ではこのシアル酸含有N型糖鎖に着目して検討を開始した。昨年度は定常条件で培養したヒト網膜毛細血管内皮細胞より細胞抽出液を調整した後、免疫沈降法でVEGFR-2を単離し、酵素によるN型糖鎖の切断、ビーズによる糖鎖の捕捉、標識試薬との交換を行い糖鎖を回収した(グライコブロッティング法)。その後、サンプルを質量分析に供して得られたスペクトルについてデータベースに照合して糖鎖構造の推定を行った。その結果、16種類のN型糖鎖構造が推定され、その中の主な糖鎖として(Hex)1(HexNAc)2(Deoxyhexose)1+(Man)3(GlcNAc)2、(Hex)2(HexNAc)2(Deoxyhexose)1+(Man)3(GlcNAc)2、(HexNAc)2(Deoxyhexose)1+(Man)3(GlcNAc)2という3種類の糖鎖構造が推定された。次年度以降は、糖尿病網膜症の病的環境下(低酸素、糖負荷、サイトカイン添加、酸化ストレスなど)で培養した網膜毛細血管内皮細胞からVEGFR-2を免疫沈降法により単離し、糖鎖構造を解析して定常条件で培養したコントロールとの比較を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト網膜毛細血管内皮細胞中のVEGFR-2上の糖鎖を解析したとする報告はこれまでなく、解析が可能かどうかが大きな鍵であったが、今回の検討で糖鎖解析までおこなうことができた。おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の検討として、糖尿病網膜症の病的環境下(低酸素、糖負荷、サイトカイン添加、酸化ストレスなど)で培養した網膜毛細血管内皮細胞からVEGFR-2を免疫沈降法により単離し、糖鎖構造を解析して定常条件で培養したコントロールとの比較を行う予定である。もし、定常条件では存在しない糖鎖構造が糖尿病条件で検出された場合には、その病態特異的な糖鎖構造の生成に関与すると考えられる糖転移酵素や切断酵素の発現についてもReal-time PCR法、ウェスタンブロッティング法、ELISA法などを用いて検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の研究計画は培養網膜血管内皮細胞を用いたin vitro系の検討であったが、順調に研究が行われ、予定よりも低額の研究費で計画遂行が可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に計画している糖転移酵素や切断酵素の発現に関するReal-time PCR法、ウェスタンブロッティング法、ELISA法などに用いる予定である。
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