研究課題
ラットは生来、外界の情報を収集するために、視覚に加えて聴覚への依存度も大きい。失明後には音刺激に対しては遺伝盲ラットの視覚野で、光刺激による誘発電位とは異なる波形がみられ、その誘発電位の振幅は有意に正常ラットより大きい反応を示すことを報告した。さらなる長期的な観察で、ほぼ視細胞の変性が終結する生後4ヵ月でもっと大きい音に対する反応となること、その変化は持続することが明らかとなった。以上の結果から、失明したラットの視覚野が聴覚を補うために聴覚野の一部として機能していることが示された。続いて、失明によって機能変化した視覚野が視機能の回復によって、再び機能変化するかどうかを調べた。5か月齢の遺伝盲ラットにmVChR1 の遺伝子導入を行い、7か月齢時に光刺激による視覚誘発電位測定を行い、視機能の回復を確認した。この視機能回復ラットと同月齢の遺伝盲ラットの音刺激に対する反応を比較したところ、有意な差はみられず、機能変化した視覚野において視機能回復によって視覚反応が得られるようになった一方で、聴覚反応の低下はみられないことが判明した。このことから、失明によって聴覚野へと置き換わった視覚野の領域が視機能回復後も変化していないことを示していると考えられる。視覚応答領域が減少していることは視機能治療後の視覚認識に影響を及ぼすと考えられる。より効果的な視覚回復のためには眼の構造的、機能的な回復に加えて、機能変化後の視覚野の視覚および聴覚領域を特定し、視覚応答領域を回復させる方法を検討することが必要であると考えられる。
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