研究課題/領域番号 |
16K15730
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中澤 徹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30361075)
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研究分担者 |
西口 康二 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (30447825)
藤田 幸輔 東北大学, 医学系研究科, 助手 (80708115)
佐藤 孝太 東北大学, 医学系研究科, 助教 (50732327)
横山 悠 東北大学, 大学病院, 助教 (00597312)
村山 奈美枝 東北大学, 大学病院, 産学官連携研究員 (60597516)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 網膜神経節細胞 / 緑内障 / アデノ随伴ウイルス / E-SARE |
研究実績の概要 |
緑内障や視神経症などの多くの眼疾患で網膜神経節細胞(RGC)障害により不可逆的視機能の損失を来す。その病態解明のために、これまでに動物モデルを使った実験が多くなされてきた。しかし、いまだそのRGC死の病態は不明な点が多い。その理由の一つとして、RGC機能を高い精度で評価しうるin vivo実験方法がなかったことが挙げられる。本研究では、神経活動依存的に転写が起こるArcプロモーターをベースに近年開発されたEnhanced Synaptic Activity Responsive Element (E-SARE)とAAV技術を用いて、RGC機能のin vivoイメージング法を確立することを目的とした。 まずはE-SAREプロモーターにレポーター遺伝子として蛍光タンパク質を組み込んだAAVベクターを作製した。続いてin vivoイメージングの撮影条件の検討を行った。作製したAAVをマウスに硝子体注射することでRGCに感染、導入させた。導入後のマウスを48時間暗条件下に置いた後、明条件下で6時間後に共焦点レーザー検眼鏡でin vivoイメージングを行った。その結果、明条件下で活性化されたRGCのシグナルを良好にイメージングすることができた。今後、さらに撮影条件についてさらに検討を進めて行く予定である。 また、発現したE-SAREレポーターの発現が妥当なものか検証するためにARCタンパク質の発現を免疫染色で確認することとした。正常マウスを用いた免疫染色においてRGCにARCタンパク質の染色を確認することができた。 本研究は、これまで困難であったRGCのin vivo機能評価を、簡便かつ高感度に細胞単位で行うことを可能にする革新的技術の開発に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では28年度にAAVの作製とin vivoイメージングの撮影条件の検討を行い、29年度から網膜障害モデルを用いた技術の精度評価とRGC機能の評価を行う予定であった。現在までのところ、AAVは作製し、撮影条件についてはさらに検討が必要ではあるものの、イメージングは問題なくできており、速やかに次の計画に進むことが可能である。現段階において、研究を進める上で大きな問題はなく、おおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は撮影条件の検討が終わり次第、速やかに網膜障害モデルを用いた技術の精度評価とRGC機能の評価を行う。マウスのRGC障害モデルまたは桿体細胞、錐体細胞の両視細胞の機能を消失した全盲マウスを用いて、「in vivo でRGC機能を可視化する」技術の精度を評価し、さらに覚醒下と麻酔下におけるRGC機能の比較を行う。 このRGCの「in vivo機能の可視化」の実現によって、RGC機能が感度・特異性高く、簡便に、短時間で評価できるようになる可能性がある。この新技術によってRGCの病態解明のための研究が加速できると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
AAV作製には、大量のプラスミド精製・培養関連の消耗品、また精製過程にはカラムや溶液、濃縮用のカラムも必要であり、ウイルスのクオリティチェックにSDS-PAGE、ウイルスゲノムの定量、遺伝子発現解析を行う必要があり、関連試薬費として計上した。しかし、現在in vivoイメージングの撮影条件の検討途中であり、AAVの消費が少量にとどまり、また、動物も必要最低限しか、維持をしていないため、次年度に繰り越す結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
in vivoイメージングの撮影条件の検討が終了したのち、網膜障害モデルを用いた技術の精度評価とRGC機能の評価を行う予定であり、大量のAAV作製が必要であり、そのためのプラスミド精製・培養関連の消耗品、また精製カラムや溶液、濃縮用のカラム、また、クオリティチェックにSDS-PAGE、ウイルスゲノムの定量、遺伝子発現解析の関連試薬費に使用予定である。また、使用するマウスも繁殖させる必要があり、費用を要する。
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