平成28年度は、共焦点レーザー蛍光顕微鏡または2光子レーザー蛍光顕微鏡を用いることにより、GFP蛍光蛋白質により標識されたマウス網膜マクロファージの動態を連続的に観察する技術を開発した(Ogura et al. JCI Insight 2017)。しかし、麻酔下のマウスでは角膜乾燥により水晶体が混濁するため、1時間以上にわたる網膜イメージングは不可能であった。そこで平成29年度は、麻酔下におけるマウス角膜の乾燥を防ぐ新型コンタクトレンズを開発し(論文投稿中)、6時間以上にわたる連続網膜イメージングを実施することに成功した。つぎに、抗PDGFRβ抗体を投与して網膜血管壁のペリサイトを消失させたマウスにて、生体網膜イメージング解析を実施した。本マウスでは、網膜の血管壁バリア破綻および炎症が遷延するとともに、血管新生と血管退縮が継続的に進行する(Ogura et al. JCI Insight 2017)。実際に、生体網膜イメージングでは循環血液中の白血球が毛細血管を閉塞させることにより、血流をうっ滞させることが確認された(投稿準備中)。しかし当初予定していた、網膜新生血管における内皮細胞ダイナミクスのイメージング解析については、現時点で成功に至っていない。一方、新生仔マウスにおける網膜血管発生の組織学的解析結果をもとに、血流や酸素分圧をパラメーターにした数理モデルを構築し、網膜血管新生をシミュレーションすることに成功している(投稿準備中)。本研究課題は平成29年度をもって終了するが、これまでの研究成果をもとに、平成30年度以降の研究により網膜新生血管における内皮細胞ダイナミクスの生体イメージング解析および数理モデル構築の実現をめざす。
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