研究課題/領域番号 |
16K15740
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
砂原 正男 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (80750314)
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研究分担者 |
本多 昌平 北海道大学, 大学病院, 助教 (90588089)
宮城 久之 北海道大学, 医学研究院, 特任助教 (50596442)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小児 / 肝芽腫 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
肝芽腫は胎児肝の発生過程におけるepigenetic異常が発癌および進展に大きくかかわっている。肝芽腫治療のキードラッグはシスプラチン(CDDP)であるが、肝芽腫患者の10%程度に治療抵抗性があり、その予後は不良となる。肝芽腫のCDDP抵抗性に関わるepigenome異常を解明し、肝芽腫の新規分子生物学的マーカーの確立、CDDP耐性関連遺伝子の同定を行うことでCDDP耐性の解除や新規治療薬開発への足掛かりとすることを目的とした。 肝芽腫切除症例を、術前化学療法にCRまたはPRであった6例をCDDP感受性群、SDまたはPDであった5例をCDDP抵抗性群と群別化し、切除検体よりDNAを抽出し、網羅的メチル化ビーズアレイ解析を行い、ゲノムワイドなCDDP耐性に関与するメチル化プロファイルの解析、CDDP耐性に関与する遺伝子の抽出を行った。また、肝芽腫細胞株であるHuH6、HepG2を用いて、CDDPへの断続的な暴露によりCDDP耐性株を作成した後、野生株とともにtotal RNAを抽出し網羅的発現アレイ解析を行い、CDDP耐性株に有意に発現変動している遺伝子を抽出した。さらにこれらの結果より、CDDP耐性関連遺伝子の絞り込みを行った。 HuH6の発現アレイとの結果より、5個のCDDP耐性の候補遺伝子抽出した。これらの遺伝子に対し、追加で55症例のメチル化率を検討し、3遺伝子で予後との有意な関連を証明できた。 HepG2の発現アレイとの結果より、23個のCDDP耐性の候補遺伝子を抽出した。これらの候補遺伝子に関して、遺伝子操作を行いCDDP耐性能の確認や細胞機能評価を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝芽腫臨床検体より抽出したDNAの網羅的メチル化ビーズアレイ解析より、クラスタリング解析でCDDP耐性群と感受性群でメチル化傾向の群別化が可能であった。また、CDDP耐性の肝芽腫細胞株の発現アレイの結果も用いて、CDDP耐性候補遺伝子が抽出できた。また、候補遺伝子のメチル化解析を、バイサルファイトパイロシークエンス法を用いて他の44症例でも施行し、予後との関連を証明できた。 FFPE切片より原発巣(組織型ごとに分別)および転移巣から分別回収したRNAを用いてmiRNA発現アレイ解析をおこなった。当初本研究にて計画していた血管浸潤部からの検体抽出は適切な切片が得られなかったため、高悪性度腫瘍部として転移巣を選択した。miRNA発現プロファイルを各組織型間で比較し、現在DNAメチル化解析との統合解析をおこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、絞り込んだ候補遺伝子の遺伝子操作を行い、CDDP耐性能の確認、細胞機能評価を施行中である。CDDP耐性能の確認ができた候補遺伝子に関して、他の臨床検体でもバイサルファイトパイロシークエンス法でメチル化率の測定を行う予定である。更には、上記メチル化解析およびmiRNA発現解析から得られたドライバーエピゲノム変異について臨床病理学的因子との関連を検討し、肝芽腫予後予測因子として臨床応用されうる分子マーカーを確立することを目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:候補遺伝子が予定数より多かったため、バイサルファイトパイロシークエンシング施行による症例数の追加に先行して、候補遺伝子の遺伝子操作によるCDDP耐性能確認を行ったため、その分の費用が次年度繰り越しとなった。
使用計画:次年度使用額となった予算で、パイロシークエンシングやメチル化ビーズアレイ解析などを行い、症例数の追加を行う予定である。
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