研究実績の概要 |
ヒルシュスプルング病(HSCR)は、胎生期に腸管神経系(ENS)を形成する腸神経堤由来細胞(ENCCs)の運動、増殖などに異常が生じて発症する。HSCRにおける神経節細胞欠損の過程は明らかになりつつあるが、その分子メカニズムに関してはほとんどわかっていない。本課題では、ENCCsの遊走に着目し、マウス胎仔の腸管形成におけるENCCs遊走を調節する分子を、遊走能の高いENCCs周辺組織から探索することを試みた。 マウス胎仔腸管へのENCCsの移植実験から、マウス胎生13.5日(以下E13.5と表記)までの腸管では移植されたENCCsは腸管上を遊走、成熟し、神経ネットワークを形成するのに対し、E14.5以降の腸管では移植したENCCsが腸管上をほとんど遊走しないことが報告された(Druckenbrod NR, Development 2009、Hotta R, J Clin Invest 2015)。これらの報告は、E13.5-E14.5を境として出現するENCCs遊走抑制機構の存在と、その細胞遊走抑制機構が、細胞補充療法の妨げとなっていることを連想させた。そこでE13.5-E14.5に出現するENCCs遊走の抑制機構を明らかにする目的でE11.5とE15.5マウス腸管の比較マイクロアレイ解析を行った。この結果、細胞遊走促進の候補遺伝子14遺伝子、細胞遊走阻害細胞外マトリクスの候補遺伝子30遺伝子を同定した。
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