研究課題
リンパ浮腫は手術や外傷によるリンパ管の損傷、または先天性なリンパ管の形成不全の結果、損傷部位の末梢側のリンパ液還流が阻害され、浮腫が起こる疾患で、浮腫以外にも痛みやかゆみを生じ、進行すると不可逆性になるなど様々な問題が生じる。現在のところ臨床的には理学療法および手術療法(リンパ管静脈吻合など)が行われているが、根治は困難である。特に乳がんや子宮がんの手術の際に行うリンパ節郭清の術後に生じやすく、これら癌患者の苦痛の大きな要因の一つとなっており、画期的な治療法が待たれているのが現状である。われわれは、個体発生時の静脈角においてリンパ管と静脈が合流することに着目し、静脈角形成時の静脈角周囲において発現している液性因子の検討を行っている。それにより、リンパ管-静脈間の吻合を薬剤性に誘導する新しい治療の可能性について検討を行い、これまでにない低侵襲な薬剤局所注入治療法の開発を目標とした。治療に用いる候補因子として、文献的に治療効果が期待されるVEGF-C及びTGFΒ阻害薬を用いることとした。前年度までに得られたリンパ浮腫マウスにてVEGF-C及びTGFΒ阻害薬の局所投与によるリンパ浮腫の治療を行い、効果判定を行った。healthy、リンパ浮腫未治療(control)、VEGF-C投与、TGFΒ阻害薬投与、VEGF-C及びTGFΒ阻害薬投与の5群(それぞれ3匹ずつ、合計15匹)にて四肢周径および、組織学的検討を行った。治療群それぞれで浮腫の改善傾向を認めたが、有意差は得られなかった。そこまでで得られた成果を学会発表を行った。その後、追加実験を行う過程において同一モデルが上手く作成できず、追加のデータを得ることができなかった。現在その原因を調査中であり、研究期間を超過してしまうが追加データを得られた後、最終的な論文化を目指す。
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