研究実績の概要 |
細胞外マトリクス分子LTBP-2はbFGFと強力に結合すると報告されている。本研究目的は、 LTBP-2の創傷治癒における機能的役割を解明することである。 Panniculus carnosusを温存した皮膚欠損モデルを作製し、肉芽組織の蛍光免疫染色を行ったところ、肉芽組織の下層にLTBP-2の線維状染色を認め、その部位に一致してマクロファージの集積を認めた。また、炎症後線維化モデルを作成するため、皮膚欠損創の治癒後にM2型マクロファージを誘導する薬剤の投与を行うモデルを作成したところ、炎症性肉芽腫様の組織形成を認めた。マクロファージの集積に一致して、LTBP-2の線維状染色を認めた。LTBP-2欠損マウスにおいても、同様のモデル作製を行ったが、野生型マウスのモデルと比較して差異を認めなかった。以上のことからLTBP-2が無くてもマクロファージは誘導されると考えられた。 野生型マウスとLTBP-2欠損マウスの背部皮膚における遺伝子発現の差を検討するために、皮膚から抽出したmRNAを用いて定量リアルタイムPCRを行った。LTBP-2欠損マウスの背部皮膚では野生型マウスの背部皮膚と比較して、Col1a1, Col3a1, Fgf2遺伝子の発現が約40%低下していることがわかった。この結果はLTBP-2がコラーゲン分子の遺伝子発現量をコントロールしている可能性を示唆するものであり、LTBP-2の機能阻害によって皮膚線維化を抑制することができるかもしないと考えられた。
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