研究課題/領域番号 |
16K15750
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久保 盾貴 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00362707)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | neurofibromin |
研究実績の概要 |
レックリングハウゼン病(neurofibromatosis type 1、以下NF-1と略す)では、手術後の傷跡が非常にきれいになることが知られていることから、NF-1の瘢痕形成メカニズムについて、機械的伸展刺激受容システムの観点から解析を進めている。 正常の皮膚線維芽細胞に機械的伸展刺激が加わると筋線維芽細胞への分化が亢進するのに対し、NF-1患者由来の皮膚線維芽細胞ではそれが認められなかった。一方で、いずれの線維芽細胞においても機械的伸展刺激により細胞骨格制御因子の1つであるRhoAは活性化することがpull-downアッセイにて確認された。同様の結果が、NF-1の原因遺伝子産物であるNeurofibrominのsiRNAを用いた実験においても確認された。 過去の文献によると、NeurofibrominはRhoAの下流にあたるLIMKのリン酸化(活性化)に対して抑制的に作用することが報告されている。すなわち、Neurofibrominの機能的異常を来しているNF-1においては、LIMKおよびその下流のCofilinが過剰にリン酸化状態にあると予想した。そこで、伸展刺激前後におけるそれらのリン酸化タンパク質発現の変化をウエスタンブロッティングにて解析したところ、正常線維芽細胞では伸展刺激によりLIMK2およびCofilinのリン酸化が亢進するのに対し、NF-1由来線維芽細胞では伸展刺激前からリン酸化タンパク質が多く、伸展刺激を加えてもその増加は見られなかった。 以上の結果から、NF-1における機械的刺激に対する反応性の低下は、Neurofibrominの機能的異常によるLIMKおよびCofilinの過剰なリン酸化による可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において非常に重要なポイントであるLIMKおよびCofilinの活性化評価において、それらのリン酸化タンパク質の発現解析を、ウエスタンブロッティングを用いて行っているが、結果に大きなばらつきが見られた。そのため、アッセイの再現性を獲得するために様々な工夫を繰り返し試す必要があり、そこに時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、機械的伸展刺激に対してCofilinのさらに下流にあるアクチン動態の違いや、アクチン脱重合阻害剤であるJasplakinolideを用いた解析などを進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他に使用できる財源があったので、そちらを優先して使用した結果、次年度使用額を生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は、機械的伸展刺激に対してCofilinのさらに下流にあるアクチン動態の違いや、アクチン脱重合阻害剤であるJasplakinolideを用いた解析などを進めていく予定である。
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