研究実績の概要 |
放射線照射によりどの程度の組織障害が起こるかを調べた。5Gy、10Gy,15Gyをそれぞれ1回から3回連日投与し、その後の組織障害を4週まで観察して評価した。さらに4週目で、組織欠損を作成し、そこでの創傷治癒の程度を観察し、そこに治療として、脂肪幹細胞(培養)、脂肪組織、あるいは脂肪間質組織細片のいずれかを注射して、その効果を観察した。照射量に応じて、組織の急性傷害とともに、組織の瘢痕形成や萎縮が認められた。放射線障害によって遅延した創傷治癒は、脂肪幹細胞を含むいずれの治療においても、改善が認められた。 放射線照射マウスの実験を通して、確定的放射線障害は総照射量に依存すること、総量が同じ場合は分割照射することにより障害が減少することが明らかになった。45Gyの照射モデルを使って、その創傷治癒を調べたところ、大きく遅延することがわかった。さらに、その障害皮膚に、培養脂肪幹細胞(ヒト細胞)、ヒト吸引脂肪(遠心後)、あるいは細片化脂肪間質(幹細胞を含む)を注射することにより、遅延した創傷治癒が正常化することが明らかになり、肥沃化治療の可能性が示唆された。本研究内容に基づき。乳がん温存療法における放射線障害に対する臨床研究を計画し、倫理申請を行う。本臨床研究においては、治療前と治療後において、皮膚血流、伸展度、弾性、酸素分圧、などを調べて、組織肥沃化の影響について詳細に機能解析を行う予定である。
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