研究課題
肥厚性瘢痕は、創傷治癒反応が過剰に起こりコラーゲンなどの細胞外マトリックスが蓄積した状態である。肥厚性瘢痕形成に関わる因子として主なものに、(1)創部にかかる緊張、(2)創部での炎症がある。緊張は物理的機械的刺激、炎症は免疫細胞からの生物化学的刺激によって引き起こされる。炎症・免疫反応は、最初に樹状細胞などの抗原提示細胞が抗原を提示してサイトカインを放出し、これにリンパ球が反応、更に様々なサイトカインを放出することで血管透過性の亢進や細胞の遊走を促すことで起こる。機械的刺激がある部位には炎症・肥厚性瘢痕が起きやすいが、初めに機械的刺激のシグナルが直接的・間接的に樹状細胞に伝わり、そのシグナルが免疫系の細胞や線維芽細胞に影響を及ぼし、肥厚性瘢痕が形成されるのではないかと考えた。しかしながら、樹状細胞の培養がうまくいかなかったため、樹状細胞そのものではなく、樹状細胞からシグナルを受ける側と考えられる線維芽細胞の研究を進めることとした。これまで機械的刺激が肥厚性瘢痕を引き起こすメカニズムとしてイオンチャネルであるTRPC3 が関わることを見いだしており、TRPC3をstableに過剰発現させた線維芽細胞はすでに作成していたため、このノックアウト細胞を作成することで、線維芽細胞におけるTRPC3と免疫との関わりを探ることとした。CRISPR/Cas9システムにTRPC3のガイドRNAを組み込んだプラスミドを作成し、Lipofection法にてNIH3T3細胞にトランスフェクションを行った。細胞を1個/wellになるように希釈して96well plateにて培養、クローニングを行った。クローニングした細胞をWestern blot法にてTRPC3のノックダウンについて確認したがいずれのクローンでもTRPC3の発現がみられ、ノックダウンがうまくできなかった。
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