研究課題/領域番号 |
16K15759
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
島岡 要 三重大学, 医学系研究科, 教授 (40281133)
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研究分担者 |
朴 恩正 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (20644587)
岡本 貴行 島根大学, 医学部, 准教授 (30378286)
江口 暁子 三重大学, 医学系研究科, 特任助教(研究担当) (00598980)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炎症 / 免疫 / 敗血症 / ショック |
研究実績の概要 |
「敗血症性ショックでは持続する炎症でリモデリングされた大網乳班から分泌されるエキソソーム(トレロソーム)が、局所ではパラクライン的にマクロファージを炎症促進型M1から炎症抑制型M2に変化させ、さらに循環血液中を流れ遠隔リンパ組織に到達し、全身性にはリンパ球や抗原提示細胞に作用し病的免疫寛容を引き起こすことにより、強力な免疫麻痺を引き起こす」という独創的な仮説を検証するために、3つのステップで段階的に研究を推進している。(1)免疫麻痺が起こる敗血症晩期では、大網乳斑が構造的・機能的にリモデリングされることをマウス盲腸結紮穿刺(CLP)モデルで解析する。現在までにCLPマウスモデルの作成をするために、麻酔下に回復し、盲腸結紮穿刺を行い、盲腸穿刺の具合を調節するために、死亡率を60%程度に調整し病態晩期に免疫麻痺に象徴的なシグニチャーの出現を確認した。免疫麻痺状態にある病態晩期のCLPマウスより大網を含む腹部臓器や腸管を取り出し、免疫細胞成分を分離し、細胞生物学的および分子生物学的な解析を行った(2)リモデリングされた大網乳斑が分泌するエキソソームが免疫寛容を誘導する能力を器官培養により検討し、トレロソーム活性を明らかにするために、細胞を分離しフローサイトメトリーにより、表面抗原の発現より各種構成細胞の分画を定量的に解析した。リンパ球とマクロファージと単球分画では細胞内染色によりサイトカイン発現レベルを測定し、リンパ球(Th1/Th2/Th17)とマクロファージ/単球(M1/M2)の機能と分化を解析した。(3)トレロソーム活性の分子基盤をプロテオミクスと次世代シークエンシングを用いて解明するための準備段階として、複数のプロテオミクス解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画されている:【Part-1】免疫麻痺が起こる敗血症晩期では、大網乳斑が構造的・機能的にリモデリングされることをマウス盲腸結紮穿刺(CLP)モデルで解析するサブプロジェクトについては、前述したように、「CLPマウスモデルの作成をするために、麻酔下に回復し、盲腸結紮穿刺を行い、盲腸穿刺の具合を調節するために、死亡率を60%程度に調整し病態晩期に免疫麻痺に象徴的なシグニチャーの出現を確認した。免疫麻痺状態にある病態晩期のCLPマウスより大網を含む腹部臓器や腸管を取り出し、免疫細胞成分を分離し、細胞生物学的および分子生物学的な解析を行った」ので、計画どおりに進んでいる 【Part-2】リモデリングされた大網乳斑が分泌するエキソソームが免疫寛容を誘導する能力を器官培養により検討し、トレロソーム活性を明らかにするサブプロジェクトについては、前述したように「細胞を分離しフローサイトメトリーにより、表面抗原の発現より各種構成細胞の分画を定量的に解析した。リンパ球とマクロファージと単球分画では細胞内染色によりサイトカイン発現レベルを測定し、リンパ球(Th1/Th2/Th17)とマクロファージ/単球(M1/M2)の機能と分化を解析した」ので計画通りに進んでいる。 さらに【Part-3】トレロソーム活性の分子基盤をプロテオミクスと次世代シークエンシングを用いて解明するサブプロジェクトについては、前述したように「準備段階として、複数のプロテオミクス解析を行った」ので当初計画したよりも順調に進んでいると結論できる。
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今後の研究の推進方策 |
【3】トレロソーム活性の分子基盤をプロテオミクスと次世代シークエンシングを用いて解明する。 免疫麻痺を誘導する活性を確認できた器官培養上清中のエキソソーム(トレロソーム)に内包される活性分子(膜タンパク、サイトカイン、miRNA等)の同定する。活性分子がタンパクまたはmiRNAである可能性を想定し、プロテオミクスまたは次世代シークエンサーを用いた解析を行うことにより研究を推進する計画である。そのために、プロテオミクス(活性をもつ分子がタンパクである可能性を探求する方向としては、タンデム質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー (LC/MS/MS) で、タンパク活性分子の候補を同定する。候補分子のリストをもとに、マニュアルまたはバイオインフォマティクスによるデータマイニングのサポートを利用して、免疫抑制や免疫細胞の負の制御に関与する分子を絞り込む。絞り込まれた分子の機能を実験的に検証する。すなわちそのタンパクの過剰発現により免疫麻痺が誘導され、抗体やsiRNAによる阻害により免疫麻痺が解除できることをin vitroとin vivoで検証する計画を推進する。また別のアプローチとして、次世代シークエンス(活性をもつ分子がmiRNAである可能性を探求)を利用する計画である。Exo-RNAサンプルを調整し、ライブラリーを作成、次世代シークエンサーによるシークエンシングを行う。得られたデータはバイオインフォマティクス(Exosome RNA-seq Analysis、Maverix Biomics社)を用いて解析し、上記と同様に免疫細胞の活性化や分化に関与する分子を標的としたmiRNAを絞り込む。絞り込まれた分子の機能をmiRNAミメティックやインヒビターを用いてin vitroとin vivoで実験的に検証する計画を推進する。
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