研究課題
熱中症患者は、ヒートアイランド現象や独居老人の増加などの要因により、年々増加しており社会問題化している。臨床では、熱中症による不可逆的な脳腫脹を治療するのは非常に困難であり、病態生理の解明および新たな治療方法の開発が望まれている。これまでに、ラットモデルを用いた検討により、体温異常(高温)によって脳の血管透過性が亢進することが報告されているが、高温が脳血管内皮細胞に及ぼす影響は明らかになっていない。昨年度にin vitro血液脳関門モデルで熱を加えるとモデルの抵抗値の低下を認めたので熱自身の直接効果による透過性が変化することが示された。本年度は、バリア機能のメカニズムに迫る研究を引き続き行った。(1)血液脳関門関連タンパクの発現:マウスの熱中症モデルを用いた研究では、血液脳関門のバリア機能にかかわるタンパク質であるclaudin-5の発現が減弱していることをウエスタンブロットで示した。よって、熱中症モデルマウスにおいて、claudin-5の発現が低下することで血管透過性が亢進していることが示された。(2)血清因子の血液脳関門への影響:熱中症モデルマウスの血清(10%)をヒトiPS細胞由来BBBモデルに作用させると、脳血液関門モデルの抵抗を有意に低下させた。よって、熱中症では熱による血液脳関門への直接作用のみならず、血中の炎症性サイトカインなどの血清因子による間接的な作用が、透過性亢進の要因として示唆された。以上を論文報告としてまとめると同時に、さらなる起因物質の検討を行う。
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