研究実績の概要 |
重症感染症後に何らかの臓器障害へと進展した場合に敗血症となる.これらの臓器障害への進展の背景には外来微生物由来のpathogen associated molecular patterns (PAMPs)が生体の免疫担当細胞と反応,活性化しその結果として産生されるdamage associated molecular patterns (DAMPs)がkey mediatorsとして認識されるようになった. これらのDAMPsは生体由来の蛋白や脂質メディエータであり,特に核内に存在するはずの蛋白質が細胞外に遊出することにより強力な炎症を引き起こすことが明らかとなってきた.敗血症におけるDAMPs濃度の推移と臓器障害,生命予後との関連を明らかとし,これらのDAMPsを制御できる可能性のある抗凝固と抗炎症作用を有する生理活性物質thrombomoduline(TM)を用いてDAMPsの中和作用について検討した.腹膜炎による敗血症モデルとして9週齢のWistar ratを用いて,盲腸結紮穿孔(cecal ligation and puncture: CLP)モデルを作成した.経時的な採血を行い,炎症性サイトカインTNF-α,DAMPsとしてHMGB-1, Histone H3蛋白濃度をELISA sandwitch法にて測定した. CLP作製後,TNF-αは4時間で,HMGB1とHistone H3蛋白は12時間以降有意に上昇することが明らかとなった.したがって,CLPラット作製後12時間経過した時点でのTM投与によるHMGB1, Histone H3蛋白濃度を比較することとした.現在,CLPラット作製時にTMとEGFドメインTM(fTM),LectinドメインTM(lecTM) を投与し,12時間後に採血し,HMGB1, Histone H3蛋白濃度との関係について検討している.
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