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2016 年度 実施状況報告書

骨細胞ネットワークの分泌蛋白ソーティングとミニモデリング誘導メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 16K15771
研究機関北海道大学

研究代表者

網塚 憲生  北海道大学, 歯学研究科, 教授 (30242431)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード骨細胞 / リモデリング / ミニモデリング / スクレロスチン / 骨細管
研究実績の概要

平成28年度の研究計画は、骨細胞・骨細管系ネットワークにおける分泌蛋白のソーティングについてである。その内容は、ミニモデリングで骨形成された領域における骨細胞ネットワークの規則性、スクレロスチンの局在、メカニカルストレスの分布におけるシミュレーションとなっている。ミニモデリングを誘導することが知られているエルデカルシトール(活性型ビタミンD3アナログ)をラットに投与し、骨細胞ネットワークを観察すると、成熟骨よりも規則性にかけた骨細胞の分布が認められた。スクレロスチンの局在については、ミニモデリングで形成された骨基質内の骨細胞および細管領域にはスクレロスチン陽性反応は認められなかった。一方、皮質骨などの成熟骨における骨細胞・骨細管にはスクレオスチンの陽性反応が観察された。免疫電顕で観察すると、骨細胞由来の別の因子であるDMP-1は骨小腔や骨細管の壁に局在するのに対して、スクレロスチンは細胞突起と細管内部の両方に局在しており、特に、骨芽細胞に向かう細管においてスクレロスチン強陽性反応が認められた。このことから骨細胞によるスクレロスチンの分泌方向が定まっている可能性が示唆された。現在、連続切片を作成し、ミニモデリング領域を3次元構築することで、メカニカルストレスの分布について有限要素法で解析する予定である。さらに、研究計画の一部として掲げたFIB-SEMによる骨芽細胞および骨細胞の3次元微細構造解析については、骨細胞から伸びる細胞突起を立体構築して観察すると、骨細胞体から太く短い細胞突起が水平に伸びており、そこから細長い細胞突起が水平に分岐していること、さらに、その細長い細胞突起がある程度の伸びた箇所で垂直に折れ曲がり、骨芽細胞へと続いていることを明らかにしている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ミニモデリングで骨形成が誘導された部位にはスクレロスチンの陽性反応が認められなかったこと、また、同部位において前骨芽細胞の細胞層は薄く、また、細胞増殖も活発でないことを確認していることから、ミニモデリングは、骨細胞からのスクレロスチン産生の抑制によって誘導される可能性が強く示唆された。この結果は、本研究のテーマであるミニモデリング誘導メカニズムの一端を解明するものと考えられる。一方、マウス・ラットなどのメカニカルストレスの分布については有限要素解析を用いて行う予定であるが、小動物のmicroCT像などから、直接、自動的に、メカニカルストレスのシミュレーションを行うソフトウェアがないため、連続切片を用いた立体構築像の作成に時間を有した。しかし、現在、ミニモデリング部位を同定しうる立体構築ができており、今後、有限要素解析を行う予定である。さらに、FIB-SEMの解析成果の一部は既に論文に掲載することができたため、全体的に判断して、おおむね順調に進展しているとした。

今後の研究の推進方策

今年度は、ミニモデリングで骨形成された部位とメカニカルストレスの分布について有限要素解析を施行する予定である。この点が明確になれば、従来、ミニモデリングがメカニカルストレスによって誘導されるのか否かについて明らかにすることができる。また、メカニカルストレスを感知する細胞については、骨細胞ネットワークが最有力視されており、今回の解析に重要な情報を提供できると考えられる。また、平成28年度では、活性型ビタミンDアナログだけでなく、以前、我々が明らかにしたPTH低頻度間歇投与で誘導されるミニモデリング、さらに、osteoprotegerinやスクレオスチンの分布についても解析したい。

次年度使用額が生じた理由

研究成果でも記したように、ミニモデリングで誘導された骨形成部位とメカニカルストレスの集中部位を明らかにするためにはシミュレーション解析となり、現在、有力な方法は有限要素解析である。ヒトなどにおいてはmicroCTで採取された画像をそのまま有限要素解析に使用できるが、マウス・ラットなどの小動物ではそのようなソフトウェアがないため、連続切片を作成し立体構築を得るのに時間を有した。その後のサンプル作成や解析などを平成29年度に行うため、未使用額が発生した。

次年度使用額の使用計画

エルデカルシトールでミニモデリングを誘導したサンプルの連続切片を基に構築した立体構造が得られており、今後、それを基にメカニカルストレスの分布とミニモデリング誘導部位の有限要素解析を行う。これについては、未使用額をその経費に充てることとしたい。そのほかとして、活性型ビタミンDアナログだけでなく、PTH投与におけるミニモデリング誘導、さらに、osteoprotegerinやスクレオスチンの分布についても解析することでミニモデリング誘導に関する骨細胞由来因子の役割について明らかにしてゆきたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Biological application of focus ion beam-scanning electron microscopy (FIB-SEM) to the imaging of cartilaginous fibrils and osteoblastic cytoplasmic processes.2017

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa T., Endo T., Tsuchiya E., Kudo A., Zhao S., Moritani Y., Abe M.,Yamamoto T., Hongo H., Tsuboi K., Yoshida T., Nagai T., Khadiza N., Yokoyama A., Freitas de PHL., Li M., Amizuka N.
    • 雑誌名

      Journal of Oral Biosciences

      巻: 59巻 ページ: 55-62

    • DOI

      10.1016/j.job.2016.11.004

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Immunolocalization of osteocyte-derived molecules during bone fracture healing of mouse ribs.2016

    • 著者名/発表者名
      Liu Z., Yamamoto T., Hasegawa T., Hongo H., Tsuboi K., Tsuchiya E., Haraguchi M., Abe M., Freitas PHL., Kudo A., Oda K., Li M., Amizuka N.
    • 雑誌名

      Biomedical Research

      巻: 37巻2号 ページ: 141-151

    • DOI

      10.2220/biomedres.37.141

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Frequency of teriparatide administration affects the histological pattern of bone formation in mice.2016

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto T., Hasegawa T., Sasaki M., Hongo H., Tsuboi K., Shimizu T., Ohta M., Haraguchi M., Takahata T., Oda K., Freitas PHL., Takakura A., Takao-Kawabata R., Isogai Y., Amizuka N.
    • 雑誌名

      Journal of Endocrinology

      巻: 157巻7号 ページ: 2604-2620

    • DOI

      10.1210/en2015-2028

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Histochemical examination of high-dose 1, 25(OH)2D3 effects on bone remodeling in young growing rats.2016

    • 著者名/発表者名
      Sun J., Sun B., Wang W., Han X., Liu H., Du J., Feng W., Liu B., Amizuka N., Li M.
    • 雑誌名

      The Journal of Molecular Histology

      巻: 47巻4号 ページ: 389-399

    • DOI

      10.1007/s10735-016-9681-4

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 骨の細胞に対するPTH作用の組織学的知見.2017

    • 著者名/発表者名
      網塚憲生、長谷川智香
    • 学会等名
      第62回日本透析医学会学術集会・総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2017-06-16 – 2017-06-18
    • 招待講演
  • [学会発表] 超解像共焦点レーザー顕微鏡とFIB-SEMでみる骨の世界.2017

    • 著者名/発表者名
      長谷川智香、網塚憲生
    • 学会等名
      第122回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      長崎大学坂本キャンパス(長崎県長崎市)
    • 年月日
      2017-03-28 – 2017-03-30
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨の細胞における微細構造・組織化学的知見.2016

    • 著者名/発表者名
      網塚憲生、長谷川智香
    • 学会等名
      第31回日本整形外科学会基礎学術集会
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-10-13 – 2016-10-14
    • 招待講演
  • [備考] 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 硬組織発生生物学教室

    • URL

      https://www.den.hokudai.ac.jp/anatomy2/hokudai_d/index.html

  • [備考] 北海道大学大学院歯学研究院・大学院歯学院・歯学部

    • URL

      https://www.den.hokudai.ac.jp/

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公開日: 2018-01-16  

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