研究課題
29年度は、歯胚と胚性幹細胞株から分化誘導された象牙芽細胞との比較を行なうことを計画した。まず、胎仔歯胚を単一細胞化し、上皮細胞分画及び非上皮細胞分画から様々な細胞表面分子抗体を用いで細分化し、Dspp、Amelxの遺伝子発現がどの細胞分画に多いかを明らかにした。続いて胚性幹細胞株からDspp、Amelxを発現する細胞を誘導し、同様の細胞表面分子にて分画を単離し、Dspp、Amelxの発現を調べたが、発現量が低くどの分画に象牙芽細胞やエナメル芽細胞が濃縮されているかの判断が難しかった。胚性幹細胞の培養系で効率的に象牙芽細胞やエナメル芽細胞が誘導されていない可能性が示唆されたので、培養系の適正な改良が必要であると考えられた。歯の分化に関わるとされている様々な分化因子を加えたが、Dspp の発現は上昇したが、やはり象牙芽細胞やエナメル芽細胞の分画の濃縮、単離には至らなかった。そこで、象牙芽細胞を効率的に純化する目的でDsppの遺伝子座にGFPを挿入し象牙芽細胞を蛍光検出できる胚性幹細胞株と遺伝子組み換えマウスを作成した。また、エナメル芽細胞を効率的に純化する目的でAmelxの遺伝子座にTdTomatoを挿入しエナメル芽細胞を蛍光検出できる胚性幹細胞株と遺伝子組み換えマウスを作製した。これらのマウスを用いて象牙芽細胞及びエナメル芽細胞が別々の蛍光で標識できることを、胎生17.5 日齢のマウス歯胚及び成体マウスの歯のエナメル芽細胞、象牙芽細胞で確認した。また、象牙芽細胞を蛍光標識できるマウス歯胚から蛍光陰性の前駆細胞を単離し、歯胚培養にて蛍光陽性の象牙芽細胞に分化できることを確認している。象牙芽細胞の前駆細胞の単離は可能であると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
29年度は、歯胚と胚性幹細胞株を用いた分化誘導系の比較を行なうことを計画し、Dspp, Amelxを指標に象牙芽細胞或はエナメル芽細胞及びこれらの前駆細胞の検出と単離を目指した。 歯胚や歯髄を用いてエナメル芽細胞と象牙芽細胞に発現する細胞表面分子の検討から象牙芽細胞やエナメル芽細胞を濃縮、分画することは可能になったが、胚性幹細胞では単離できず、より適切な誘導培養法の改良や細胞の純化の方法の改善が必要であった。そこで、兼ねてより作製中であった象牙芽細胞やエナメル芽細胞を別々の蛍光で検出できる胚性幹細胞株とそれらを用いて遺伝子改変マウスを作成し、これらのマウスを用いて蛍光を指標に象牙芽細胞及びエナメル芽細胞の同定と単離を行えることを明らかにした。最終年度は、これらのマウスからエナメル芽細胞及び象牙芽細胞の前駆細胞分画を同定し、単離することである。さらに、エナメル芽細胞と象牙芽細胞を同時に別蛍光で標識できるマウスから胚性幹細胞株を樹立し、胚性幹細胞から試験管内で、蛍光を指標に象牙芽細胞とエナメル芽細胞の分化誘導を試みる。両蛍光を発現するエナメル芽細胞と象牙芽細胞が確認されたなら、経時的に正常発生と比較検討することを考えている。計画の変更、修正はあったがおおきな進展を含む変更であり、研究は概ね順調であると判断した。
30年度は1)歯胚のエナメル芽細胞と象牙芽細胞の前駆細胞の単離と同定を目指す。具体的にはエナメル芽細胞と象牙芽細胞を別蛍光で標識できるマウスの歯胚から蛍光陰性のエナメル芽細胞と象牙芽細胞の前駆細胞を細胞表面抗体にて分画を単離し、歯胚培養と組み合わせて蛍光陽性のエナメル芽細胞及び象牙芽細胞へ分化できる細胞集団を同定する。2)エナメル芽細胞をTdTomato、象牙芽細胞をGFPの別蛍光で標識できるマウスから胚性幹細胞株を樹立し、現在用いているDsppやAmelxが発現する培養条件を基盤に、試験官内で GFP や TdTomato 陽性の細胞が誘導できるかを確認し、さらに効率的にこれらの蛍光遺伝子が発現する培養系を樹立する。その上で、蛍光陽性細胞の経時的な発現の時期を解析し、正常発生との違いについて検討する。3)試験官内で誘導されるエナメル芽細胞と象牙芽細胞へ分化できる前駆細胞の有無については、生体と同様に蛍光陰性のエナメル芽細胞と象牙芽細胞前駆細胞分画を単離し、正常歯胚と混合培養し、胚性幹細胞株由来の細胞が蛍光陽性の象牙芽細胞及びエナメル芽細胞への分化能を有するかを蛍光を指標に検討する。
(理由)歯胚培養 を行う実験において使用する培養皿の必要数が当初の計画より少なく済んだため.(使用計画)30年度に行う歯胚培養の実験に使用する予定である
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.medic.mie-u.ac.jp/physiol_regener/