Artは約24 kDaのタンパク質である。抗Art抗体を用いてP. gingivalis野生株および各種の変異株のcell lysateについてSDS-PAGE・イムノブロット解析を行ったところ、35~100 kDaの領域にスメアなバンドが野生株では検出された。また、T9SS構成タンパク質の欠損株であるporK、porTおよびporU株、さらにA-LPSの欠損株であるporRおよびwbpB株では野生株でみられたスメアなバンドはみられなかった。この結果はArtタンパク質がT9SSで分泌され、菌体表面のA-LPSに結合することを示唆していた。 art欠失変異株(Δart)およびその変異株にプラスミド性に野生型art遺伝子を導入した株(Δart/art+)を作製し、それらの性状を解析した。本菌は血液寒天平板上で特徴的な黒色集落を形成するが、Δart株は無色の集落を形成した。Δart/art+株は野生株同様に黒色集落を形成した。T9SS構成タンパク質であるPorK、PorL、PorMについてSDS-PAGE・イムノブロット解析を行ったところ、Δart/art+株は野生株同様、検出されたが、Δart株ではほとんど検出できなかった。porK、porL、porM遺伝子のmRNAを測定したところ、野生株の20%以下であった。 Artタンパク質のX線結晶構造解析を行った。28残基から161残基までの構造について分解能1.4オングストロームで解析できた。その結果、Artはβシートから成るイムノグロブリン様構造を呈していることがわかった。Δart株を血液寒天平板に塗抹するとある頻度で黒色集落が出現する。この表現型復帰株はPorK、PorL、PorMタンパク質が野生株同様に検出された。表現型復帰株の複数個についてゲノム解析を行ったところ、すべてporY遺伝子に変異が生じていることがわかった。
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