研究課題/領域番号 |
16K15782
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
上條 竜太郎 昭和大学, 歯学部, 教授 (70233939)
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研究分担者 |
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経堤由来細胞 / 骨再生 / 毛包 |
研究実績の概要 |
ダブルトランスジェニックマウスより採取した毛包細胞をFGF含有の幹細胞培地で培養すると、培養経過に伴いGFP陽性細胞の割合が高くなり、培養開始2週後には、全細胞数のおよそ95%を陽性細胞が占めた。一方、GFP陰性細胞の割合は培養経過に伴い低下した。それらの細胞をフローサイトメーターで解析すると、PDGFRα (platelet-derived growth factor receptor α)やSca-1 (stem cell antigen-1)などの間葉系幹細胞マーカーの発現が高いことから、未分化性を維持したまま増殖したものと考える。骨芽細胞誘導培地で培養すると、アルカリフォスファターゼ(ALP)活性は、BMPの濃度依存的に増加した。アリザリンレッド染色とVon Kossa染色は共に陽性を示し、骨芽細胞分化の指標であるOsteocalcinとOsterixの遺伝子発現が上昇した。さらに、増殖したGFP陽性細胞とマウス骨髄細胞を1,25(OH)2D3とPGE2存在下で共存培養すると、破骨細胞様の巨大で骨吸収活性をもつ細胞が形成された。これらの結果から、神経堤由来細胞が骨芽細胞様細胞へ誘導出来ることが明らかになった。増殖したGFP陽性細胞を脂肪細胞誘導培地で培養すると、細胞質に脂肪滴を含む脂肪細胞様細胞へと分化した。 神経堤由来細胞の骨基質形成能を検証するために、FGF含有の幹細胞培地で増殖させたGFP陽性細胞をⅠ型コラーゲンゲルに懸濁した後に、アテロコラーゲンスポンジへ混入した移植材料を、頭頂骨に自然修復しない欠損を作成した骨欠損モデルマウスに移植すると、欠損部に骨様組織の形成が認められた。移植後3ヶ月経過しても、移植したGFP陽性細胞は再生骨内に潜伏した。 成体マウスに存在する神経堤由来細胞は、未分化な状態で多分化能を有する細胞集団であることが明らかになり、動物実験から、移植した神経堤由来細胞は骨組織再生に応用出来ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P0-Cre/CAG-CAT-EGFPダブルトランスジェニックマウスを用い、GFP陽性細胞を指標として、成体に分布する神経堤由来細胞の体内各所をスクリーニングした。平成29年度実施予定の1)神経堤由来細胞の特性解析については、効率の高い細胞増殖法ならびに、骨芽細胞誘導法の確立と多分化能の検討などを実施して一定の成果が得られた。2)神経堤由来細胞を用いた骨組織誘導・骨再生解析については、コラーゲンを主体としたスキャホールドに神経堤由来細胞を混入した細胞移植法を用いることで、骨様組織を誘導できることを実証した。平成29年度実施予定の計画どおり達成されたことから、総合的な研究全体の達成度区分を「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画はP0-Cre/CAG-CAT-EGFPダブルトランスジェニックマウスの神経堤由来細胞を、コラーゲンを主体としたスキャホールドに包埋後に、欠損部へ移植する。その他の骨欠損モデル動物を用いて、神経堤由来細胞が持つ骨組織誘導・骨再生能について解析する。解析法として、組織形態学的評価と高解像度μCTから評価する。さらに効率的に、骨を誘導できるスキャホールドの組成について検討する方針である。それら種々の条件で誘導した再生骨に対して、ナノインデンテーション法とレーザーラマン分光法を用いて、神経堤由来細胞によって形成された再生骨の物理的特性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)骨欠損モデル動物へ細胞を移植した骨形成誘導実験から、神経堤由来細胞が骨様組織を誘導出来ることを見出したが、形成された再生骨の物理的特性については深く検討出来なかった。そこで経費の一部を繰り越して、再生された骨が外力や体重に耐える特性を備えるか否か、物理化学的に解析する実験にあてる。 (使用計画)骨欠損のモデル動物を用いた種々のスキャホールドの選定、ならびに各種成長因子の組み合わせによる修復組織の解析から、骨組織誘導あるいは骨再生能を評価する。さらに、種々の条件で誘導した再生骨に対して、ナノインデンテーション法とレーザーラマン分光法を用いて、神経堤由来細胞によって形成された再生骨の物理的特性を評価する実験に経費をあてる。
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