研究課題/領域番号 |
16K15785
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
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研究分担者 |
谷口 正之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00163634)
土門 久哲 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00594350)
前川 知樹 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50625168)
小田 真隆 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00412403) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 誤嚥性肺炎 |
研究実績の概要 |
「歯科領域 第三の感染症」とも称される誤嚥性肺炎は,耐性菌の増加と社会の高齢化に伴い,増加・難治化・重症化している.申請代表者は,一連の科研費課題研究から誤嚥性肺炎が重症化する機序として,(1)細菌由来プロテアーゼがヒト好中球を傷害し,(2)好中球内部からヒト由来プロテアーゼが放出され,(3)肺組織に対して自己プロテアーゼが攻撃する,というモデルを明らかにしつつある.本研究では,工学部教授の分担研究者が有するコメ関連のアプリケーションを用い,『コメ成分からプロテアーゼ阻害分子を選出・精製し,誤嚥性肺炎の重症化を制御する』ことを目指す.またその際には,薬学博士の分担研究者が有する PC上で各種阻害剤を三次元構造予測・改変するデジタル技術も併用し,医工薬連携の創薬イノベーション研究を試行することとした.平成28年は,以下の項目を推進した. (1)コメ破砕液をゲル濾過カラムクロマトグラフィーにより,分子量ごとにフラクション化し,コメ抽出タンパク質のライブラリー構築を行った.(2)ヒト好中球プロテアーゼ(エラスターゼ),肺炎球菌プロテアーゼ,およびMRSAプロテアーゼの組換えタンパク質を大腸菌の組換え遺伝子システムを用いて構築・精製した.ヒト好中球プロテアーゼを大腸菌の発現系で構築することが困難であったため,精製エラスターゼ標品を購入しバックアップ策とした.(3)好中球ならびに細菌由来の組換えプロテアーゼに,分子量ごとに区分けしたコメ抽出タンパク質溶液を滴下し,プロテアーゼ活性の阻害度を測定した.(4)現在のところ,細菌プロテアーゼに対するコメ抽出液からの阻害分子は,肺炎球菌およびMRSA培養液に添加し,好中球を傷害する活性を低下させるか否かを検証している.指標としては,ヒト好中球内部に局在するプロテアーゼ(エラスターゼ)の細胞外遊離率を用い,ELISA法で定量している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請は,二ヶ年での実施を計画する.研究初年度は,細菌プロテアーゼのコメ由来阻害分子を2種の実験系でスクリーニング・同定する.すなわち,(1)カラムクロマトグラフィー操作による網羅的な分子量画分法,(2)デジタル式のin silicoドッキングシミュレーション解析法,そして更なるバックアップとして,先行研究で見出した機能性コメ由来ペプチドに関し,別機能を指標とする再スクリーニング法も併用する.次いで,肺胞細胞を用いてのin vitro解析を先端機器Luninexで進める.計画二年目は,コメ由来阻害分子をマウス肺炎球菌感染モデルに供し,炎症性サイトカイン遊離亢進や致死などに対する重症化抑制の効果を解析する.そして,現在の進捗は,当初計画に従った段階まで概ね到達している.ヒト好中球プロテアーゼ(エラスターゼ),肺炎球菌プロテアーゼ,およびMRSAプロテアーゼの組換えタンパク質を大腸菌の組換え遺伝子システムを用いて構築・精製する計画については.ヒト好中球プロテアーゼを大腸菌の発現系で構築することが困難であった.その場合に備えバックアップ計画で,精製エラスターゼ標品を購入することを立案し,当該製品の調査を済ませていたため,このトラブルも無事に解決されている.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度 (1)好中球プロテアーゼ(エラスターゼ)阻害活性については,第2の実験として 好中球の破砕液と阻害候補分子,そしてヒト肺上皮細胞を混合する.そして,肺胞細胞に与える傷害を細胞の内部にのみ局在するLDHの細胞外遊離率を指標として定量化する.(2)さらに,平成28年度中に新潟大学歯学部で購入・設置が確定しているLuminexシステムを用いて,詳細なコメ由来プロテアーゼ阻害分子の機能解析をタンパク質レベルで実施する(予備的にRealTime PCR法のmRNAレベル解析も行う).すなわち,100色の蛍光ビーズを付加した肺胞細胞関連の100種のサイトカイン等の変動について,プロテアーゼ阻害分子の添加濃度依存的に解析を試みる.最大で同時に96条件を測定できることから,治療効果と副反応の濃度を決定し,治療指数を決定できる.得られる治療指数を学術的根拠として,次ステップの動物実験系を厳密に最小の匹数で計画する.(3)in vitro実験において得られたプロテアーゼ阻害分子について,肺炎球菌のマウス感染モデルによる解析実験を遂行する.致死量の肺炎球菌をマウスに気道感染させ,プロテアーゼ阻害分子の投与有無による炎症性サイトカイン遊離,およびマウスの致死に対する効果について解析する.感染マウスについては,肺胞組織の損傷度を検鏡するほか,抗エラスターゼ染色しエラスターゼ制御効果についても評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果公開の英語論文の投稿,出版費について,当初予定よりもハイインパクトに纏めることが出来た.そのため,英語論文の投稿,出版費が低い価格のハイインパクト・ジャーナルに投稿できたため,当該費用が差額約26万円となった.
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次年度使用額の使用計画 |
現在も,新たな成果を英語論文で登校中である.その追加成果の英語論文の投稿,出版費に充当させる計画である.
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