研究課題
Streptococcus pyogenesはヒトに膿痂疹や丹毒などの皮膚感染症を引き起こす原因菌である。S. pyogenesが有するアルギニン代謝経路は、代謝過程においてATPとアンモニアを産生する。皮膚感染時には、環境中の糖質が少ないために、アルギニン代謝系が主として働いていると考えられる。本研究では、S. pyogenesのアルギニン代謝機構が皮膚感染に及ぼす影響を検討した。S. pyogenes 5448株を親株として、アルギニンデイミナーゼをコードするarcA遺伝子の欠失株ならびにarcA復帰変異株を作製した。次に、THY液体培地中で培養した各菌株の増殖曲線、生菌数の推移、およびarcA発現量を評価した。また、培養上清中のアンモニア濃度を測定した。さらに、S. pyogenesのアルギニン代謝能が皮膚感染に及ぼす影響を検討するため、C57BL/6J雌マウスの背部を除毛した後に、各菌株の懸濁液をガーゼパッチにより留置することで感染させた。感染3日後、皮膚病変中の生菌数と組織像を評価した。各菌株における対数増殖期から死滅期にかけての増殖曲線に差は認められなかった。しかし、定常期から死滅期における生菌数は、arcA欠失により有意に低下した。また、野生株および復帰変異株におけるarcA発現量および培養液中のアンモニア濃度は対数増殖期と比較して、定常期以降で顕著に上昇した。感染実験では、arcAの欠失により皮膚病変中の生菌数が有意に減少した。さらに、野生株および復帰変異株感染マウスでは感染部位における潰瘍形成が認められたが、arcA欠失により抑制された。以上の結果より、S. pyogenesの皮膚病変形成にArcAによるアルギニン代謝能が寄与する可能性が示された。
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