研究課題/領域番号 |
16K15800
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今里 聡 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (80243244)
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研究分担者 |
岩崎 泰彦 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90280990)
北川 晴朗 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (50736246)
北川 蘭奈 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70711068) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯学 / 歯科材料 / レジン / ポリマー / 抗菌性 / タンパク |
研究実績の概要 |
平成28年度までに得られた結果に基づいて、MDPB、MPC、およびBMAを重量比で30/0/70、25/5/70、15/15/70、5/25/70、0/30/70の割合で混合し、ラジカル重合させた後、未反応物の除去を行い、5種の精製コポリマーを得た。合成した各ポリマー粉末をエタノールに溶解させてコート液を作製し、PMMAレジンディスクを浸漬して、MDPB/MPC/BMAコーティング試料を作製した。 作製した各コーティング試料のStreptococcus mutansの付着抑制効果を検討するため、各コーティング試料をS. mutansの菌液に浸漬し、24時間培養後、付着した細菌を回収し、コロニーカウント法により菌数測定を行った。その結果、MDPB/MPC/BMA =30/0/70、25/5/70、15/15/70の3種のコーティング試料上ではS. mutansが完全に死滅した。これらの結果と、MPCの濃度が高くなるにしたがってウシ血清アルブミンの吸着量が減少するという平成28年度の報告を踏まえて、作製した5種のうちMDPB/MPC/BMA =15/15/70のコーティング試料が唾液存在下での抗菌効果の発現に最も期待できると考えられた。 そこで、MDPB/MPC/BMA =15/15/70のコーティング試料に唾液処理を施し、唾液タンパクの吸着阻害効果、およびS. mutansの付着抑制効果を評価した。BCAプロテインアッセイにてコーティング試料上での唾液タンパクの吸着量を測定した結果、コーティングを行っていないコントロールレジンに比べてタンパク吸着量が有意に減少した。また、上述の抗菌試験と同様に、唾液処理したコーティング試料のS. mutansの付着菌数をコロニーカウント法により測定したところ、コントロールレジン上では24時間培養後、菌数が増加したのに対して、コーティング試料上では唾液存在下でもS. mutansが完全に死滅することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究実施計画に則り、作製したMDPB/MPCコポリマーの唾液存在下での口腔細菌の付着抑制効果の検討を行って、前述のような結果を得た。 以上のことから本研究の進捗は、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に得られた結果に基づいて、作製したMDPB/MPCコポリマーコーティング試料のバイオフィルム形成抑制効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のように、平成28年度と平成29年度前半までに得られた結果から、タンパク吸着および細菌付着に対する抑制効果をともに備えたコーティング試料として、作製した5種の試料のうち1種のコーティング試料に絞ることができた。そのため、唾液存在下でのタンパク吸着、および抗菌効果を評価した平成29年度後半の評価試験では、他の4種のコーティング試料の評価に係る試薬、消耗品を購入する必要がなく、当初の計画よりも効率的な経費の使用が可能であった。 次年度は、MDPB/MPCコポリマーコーティング試料のバイオフィルム形成抑制効果を、その効果の持続性を含めて検討する予定であり、培地や試薬、また長期培養を行うための器材を購入する。また、これらの研究遂行に係る消耗品は、上記の研究計画に則り必要性を吟味し効果的に使用する。
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