歯科用セメントの接着力向上により,歯科用修復物が脱落して再接着を要するリスクは減少し,患者のQOLは改善した。その反面,再治療時に修復物の除去が困難となり,過大な力を与えて歯根が破折し抜歯に至り,QOLが低下するリスクは増大した。この矛盾を解消するには,強固な接着と容易な除去という相反する性質を同時に満たすスマートなセメントが必要である。本研究で見出した,イオン液体添加グラスアイオノマーセメントは,従来と同等の接着力を発揮しつつ,必要時には通電によって接着力を大きく低下できる。したがって,安心して接着力の高いセメントを用いることが可能になり,患者のQOLの維持に繋がる。
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