研究課題
高齢者の多くは義歯を装着しているが、65歳以上の高齢者のうち56.1%がドライマウス(口腔乾燥症)を自覚しており(厚生労働省長寿科学総合研究事業「高齢者の口腔乾燥症と唾液物性に関する研究」)、唾液分泌量の減少は義歯の維持安定性の低下および褥瘡性潰瘍などの病変を引き起こす。そこで本研究では国内外を通じて初の試みとなる、①唾液分泌促進作用と粘着作用を促進すると考えられるポリグルタミン酸と②抗酸化作用による粘膜損傷治癒作用を有する白金ナノコロイドを応用し、さらに③粘弾性特性と粘着性も付与したドライマウス義歯患者用口腔保湿ジェルを創製することを目的とする。平成28年度は基剤となる口腔保湿ジェルの粘度と床用レジンとの接合力について検討した。水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(PVM-MA)を含有する水溶液を用い、上記の物性について評価した。水溶性高分子と蒸留水との割合(粉液比)は0.125、0.250、0.375、0.500とした。またCMC-NaとPVM-MAの割合は100:0、75:25、50:50、25:75および0:100の5種とした。測定にはストレス制御式レオメーターと万能材料試験機を用いた。粘着性(義歯床との接合力)および粘度は、濃度よりもCMC-NaとPVM-MAの割合が大きく影響することがわかった。平成29年度は上記と同様の材料について、ストレス制御式レオメーターを用い動的粘弾性の測定を行った。算出した粘弾性係数は動的粘性率、動的損失粘性率および損失正接である。測定の結果、動的粘性率と動的損失粘性率には粉液比が、損失正接にはCMC-NaとPVM-MAの割合が大きく影響を及ぼすことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
水溶性高分子であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体(PVM-MA)を基剤とする口腔保湿ジェルのレオロジー特性の解析をおおむね終了したため。
平成30年度は28年度および29年度の実験結果をもとに、口腔湿潤剤の適切な組成を決定し、白金ナノコロイドとポリグルタミン酸の有効性について評価する予定である。また患者が使いやすいレオロジー特性についても検討する予定である。
(理由)当初計画では白金コロイドとポリグルタミン酸に関する測定を行う予定であった。しかしながら口腔保湿ジェルの成分と動的粘弾性に関する測定に時間を要した。そのため白金コロイドとポリグルタミン酸に関する実験量は多くなかったため、当初購入予定であった白金コロイドとポリグルタミン酸の購入量およびこれに関連する実験試薬等の支出を少なくした。そのため次年度使用額が生じた。(使用計画)平成30年度は白金コロイドとポリグルタミン酸の効果に関する評価を行う予定であり、これらに必要な実験材料を購入する予定である。
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