研究課題/領域番号 |
16K15808
|
研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
大房 航 鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (50709508)
|
研究分担者 |
山田 好秋 東京歯科大学, 歯学部, 客員教授 (80115089)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 筋電図 / 気圧計 / 舌筋活動 / 口輪筋 / 歯学 / 生理学 |
研究実績の概要 |
本年度では、①昨年度に製作した機器を使用して舌筋(内舌筋)と嚥下関連筋群(主に舌骨上筋群)の筋活動を記録するとともに、口腔内圧を測定し、嚥下口腔期から嚥下咽頭期のメカニズムを筋活動および圧変化の観点から解明することとした。また、②嚥下準備期の捕食という運動において大きな役割を持つ口輪筋に着目し、口輪筋活動を簡単に測定できる機器の新規開発を行った。 ①過去の研究では、VFや舌と口蓋の接触圧の記録を用いて嚥下時の舌運動について言及されており、一般的に舌と口蓋との接触により食塊は咽頭へ移送され、嚥下反射へと至ると考えられている。しかしながら、舌筋活動を筋電図として直接的に記録した研究はない。先行研究において内舌筋の筋活動記録についてはネオジム磁石を利用した表面筋電図により記録可能なことを示し、この研究結果は既に日本咀嚼学会雑誌にて発表している。また、小型気圧計を用いた先行研究において、嚥下時の気圧変化についてすでに示されている。これらを応用し、舌(内舌筋前方および後方)および舌骨上筋群の筋活動を記録するとともに、口蓋に設置した小型気圧計を用いて、口腔内圧変化を記録した。②口輪筋筋電図および口唇閉鎖圧を簡便に同時記録可能な機器を開発した。高齢者における口腔機能低下症の観点から、口腔機能維持のため様々な評価法や訓練法が提案されているが、口唇運動の生理学的メカニズムについて研究結果が少なく、生理学的根拠に基づいた評価法が確立されていないのが現状である。今回製作した機器の特徴は、実験的使用だけでなく臨床での応用を考慮し、口唇で咥えるだけで簡便に使用可能なところにある。従来の筋電図検査では、電極の貼付や皮膚の清拭など煩雑さがあり、また、被験者の心理的負担も見逃せない観点である。本年度ではこの機器の開発およびその実用性について評価を行った。この結果は、日本顎口腔機能学会にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では研究計画のとおり、昨年度整備した筋電計および気圧計を用いて摂食嚥下機能の生理学的メカニズムを解明する実験を実施した。舌筋(内舌筋)と嚥下関連筋群(主に舌骨上筋群)の筋活動を記録するとともに、口腔内圧を測定し、口腔期から咽頭期のメカニズムを筋活動および圧変化の観点から解明することとした。本年度において、被験者よりデータの採取を行い、実験結果の解析を行っている。また、この筋電計を応用し、摂食嚥下機能として重要な口唇閉鎖を担っている、口輪筋の筋電図記録を並行して行った。口輪筋記録では顔面皮膚より表面電極を貼付し記録することが一般的であるが、この方法では男性の髭は剃毛する必要があり、被験者の選定が必要など、手間が必要である。口輪筋はその構造上、内部(口腔内)からでも同様に記録が可能なことが予想されるため、本研究では簡便に使用可能な(口にくわえるだけ)口輪筋記録用電極を新規開発した。この電極には、口輪筋の筋活動記録および同時に口唇閉鎖圧を計測可能機能を内蔵させた。以上より、本年度では、筋電計および気圧計を用いて口腔期および咽頭期の摂食嚥下機能を生理学的に解明するための実験を開始し、並行して準備期として機能する口唇閉鎖機能についてもメカニズム解明を行うための機器製作を開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
VFなどを用いた研究によると、食物摂取時において、舌と口蓋との接触により食塊は咽頭へ移送され、嚥下反射へと至ると示されている。我々は、このメカニズムについて、筋活動および圧変化の点から解明を行っていく。本研究は、1-msec単位での記録が可能なため、より細部について検討が可能なところに利点がある。本年度および来年度では、舌の前方部および後方部、舌骨上筋群、気圧計による口腔内圧変化を同時に記録し、それぞれの筋活動パターンおよび内圧変化をもたらすメカニズムについて検討を行っていく。実験データの採取は本年度にて概ね終了しており、来年度では結果の分析を重点的に行なっていく。分析によって解決が必要な事象が生じた場合は、追加実験を予定している。また、新規制作した口輪筋筋電図および口唇閉鎖圧同時記録装置は、来年度においても継続して、実用性について評価および機器改良を行う。これら結果は、学会発表や論文発表により社会へ発信していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度において予定していた被験者数に若干の変更が生じたため、実験消耗品費に余剰が生じた。被験者不足分は次年度に実施予定であるため、その本年度未使用額は次年度の実験消耗品費として使用予定である。
|