研究課題/領域番号 |
16K15809
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 靖弘 北海道大学, 歯学研究科, 教授 (90281162)
|
研究分担者 |
槇田 洋二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 研究グループ長 (80357988)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 抗菌 / 層状化合物 / フッ化セチルピリジニウム / 生体材料 / 歯質接着 / 再生 / DDS / 殺菌 |
研究実績の概要 |
本研究では,歯質接着面の劣化時に薬剤の放出によって抗菌効果を発現する次世代歯科材料の開発を目指し,殺菌剤と再生誘導物質を封入したドラッグデリバリー(DDS)型層状フィラーを作製するとともに,劣化応答性DDSの開発に必要な基礎的知見を集積することを目指す。具体的には,層状フィラーの層間にフッ化セチルピリジニウムを挿入し,フッ素成分で歯質の脱灰を抑制し,セチルピリジニウムで菌の増殖を抑制するというコンセプトに基づき材料設計を行った。 平成28年度はDDS型層状フィラーの作製方法を検討した。フッ化セチルピリジニウムは市販されていない。そこで,市販の塩化セチルピリジニウム(CPC)を用いてフッ化セチルピリジニウム(CP-F)への変換を試みた。CPCは25℃の水溶液には溶解するものの,10℃以下ではほとんど溶解しない。この溶解特性を利用してCP-Fの回収を試みた。CPC溶液にCPCの10倍モル量のフッ化カリウムまたはフッ化ナトリウムを溶解した後,5℃に冷却して析出物を生成させた。回収した析出物を再度溶解し,溶液中のCPC,F,Clの濃度からCP-F含有率を調べた。その結果,フッ化カリウムおよびフッ化ナトリウムを用いた場合のCP-Fの含有率はそれぞれ25%,30%となり,CP-Clの約30%をCP-Fに変換できた。 次に,得られたCP-F含有溶液に層状化合物を添加・撹拌し,CP-F 分子の層間挿入を試みた。1日撹拌後の固形物を固液分離し,水洗・乾燥した生成物の結晶構造をエックス線回折法で調べた結果,層間隔が大きく拡張した。また,生成物を蒸留水中に添加するとFが溶出した。本年度作製した層状フィラーは,層間にCP-Fが挿入されており,また,溶液中でCP-Fが徐放することから,劣化応答性DDSに好適であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
劣化応答性DDSの開発に必要な基礎的知見を集積するために必要不可欠なDDS型層状フィラーが作製できた。さらに,歯質接着性材料を製造販売している企業から本シーズに対する連携の申し出を受け,将来的な実用化を目指して間発を進めることになったことから,当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,当初の計画通り「歯質接着剤の試作」,「試作歯質接着材の機能分析」および「試作歯質接着材の劣化センサー機能の評価」を行い,DDSの開発に必要な基礎的知見を集積する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
歯質接着性材料を製造販売している企業が将来的な実用化を視野に入れて間発を進めることになり,当初予定していた歯質接着材料の試作を同社が担当することとなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験に必要となる物品費ならびに打ち合わせ旅費に使用予定。
|