他家由来間葉系幹細胞の培養上清から得られる細胞外小胞(Extracellular Vesicles: EV)は低免疫原性の分子送達体として知られ、それを応用した骨再生の新規ストラテジーの開発が期待されている。本研究の目的は、骨形成性遺伝子を内包した骨誘導性EVを人工骨基質に搭載した遺伝子活性基質(GAM)を作製し、その骨誘導性を評価することにある。 本年度も昨年度に引き続き、試料の追加を行い、EVの特性解析やEVの骨誘導性についての実験を実施した。実験は、ラット骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)が30%コンフルエントになった時点で、rhBMP-2にて骨分化誘導を開始し、開始後6日目の培養上清からExoQuick®(System Bioscience)を用いて骨誘導性EVを回収した。回収したEVは、電顕による粒子確認後、表面抗原や内包RNA、miRNAの発現解析により特性を評価した。次に、PKH26で標識したEVを添加した培地にてMSCを12時間培養し、細胞へのEVの取り込みを蛍光顕微鏡およびフローサイトメーターを用いて確認した。その後、rhBMP-2に替わりEVを添加した培地でMSCを培養し、骨誘導性EVの骨分化誘導能について検討した。さらに、本年度はEVを人工骨基質に搭載した試料を作製し、生体内での骨誘導性の評価を開始した。 回収したEVは、電顕にて平均粒径100nmの粒子であり、骨分化関連遺伝子の発現について回収時のMSCと類似した特性を有していた。ついで、培養中のMSCへのEVの取り込みが、標識したPKH26の発現解析により確認できた。また、培養中のMSCへの添加による骨誘導性EVの分化誘導能が、MSCの骨分化関連因子の発現上昇により確認された。さらに、EVを播種して凍結乾燥を行うことで作製した人工骨基質による移植試料において、新生骨形成能が一部確認できたため、現在移植試料を追加し、生体内でのEVの骨誘導性について詳細な検討を加えているところである。
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