研究課題/領域番号 |
16K15815
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
各務 秀明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (80242866)
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研究分担者 |
李 憲起 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (60350831)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 凍結保存 / 線維芽細胞 / in vitro試験 / 動物実験代償技術 / 安全性試験 |
研究実績の概要 |
従来薬剤等の安全性試験には動物が用いられてきた。しかしながら、動物愛護の立場からできるだけ動物を用いない安全性試験の実施が進められている。その中で最も有用性が高いのが、培養細胞を用いたin vitro試験である。その一方で、評価には細胞の調製や播種といった煩雑な操作が必要であり、実施可能な施設は限られていた。本研究の目的は、新たな細胞培養技術であるスフィア培養に着目し、この技術を用いて凍結保存可能なin vitro試験用のプレートを開発することである。はじめに、細胞源としてNIH-3T3細胞およびマウス由来線維芽細胞を用いて、スフィア形成条件の検討を行った。スフィア形成には、回転培養およびスフィア形成専用プレートの両方を比較したが、いずれにおいても効率的にスフィア形成が可能であった。また、形成されるスフィアの大きさは細胞数に依存した。回転培養では、適切な回転速度と濃度を維持することが重要であった。1つのスフィアを各プレートに1つずつ播種し、凍結保護剤を用いてプレート上で凍結した。解凍後の細胞の生存および増殖率について検討を行った。コントロールとして、プレート上で培養した細胞をそのまま凍結した群と、単離してペレットとした通常の培養細胞の凍結条件を使用した。通常のペレットによる凍結条件では、解凍24時間後で95%以上の生存率が得られた。また、ディッシュ上で培養した細胞については、解凍24時間後の生存率は0%であった。一方スフィアについては、すべてのスフィアにて細胞の増殖を認めた。また、スフィアの大きさが小さい場合には増殖に限界があり、大きい場合には壊死する細胞が多く、安定した凍結保存が困難であった。平成28年度の実験から安定したスフィアによる凍結解凍条件を決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで確立してきたスフィア培養技術を用いることで、プレート上で安定して細胞の凍結、解凍が可能であることを示すことができた点が、最も大きな成果と言える。また、通常の細胞を接着培養したプレートでは生存率が0%であったことから、本技術の有用性が示された。スフィアについては細胞カウントができないために生存率は確認できないが、すべてのスフィアから安定して細胞増殖が得られたことから、in vitro試験システムとして使用可能と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、スフィアをプレートに固定する方法である。すべてのスフィアで凍結、解凍後の生存が得られたが、スフィアは凍結あるいは解凍後にプレート内で移動したため培養細胞の分布には偏りがあり、そのままの条件では評価が困難となる可能性がある。また、解凍後ただちに評価するためには、使用する凍結保護剤の量を最小限とする必要があり、この点についても今後の検討が必要である。しかしながら、実験に必要な環境は整っており、これまでの研究も順調に推移していることから、研究期間内に実験を終了することは可能と考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに講座で使用していた血清を用いたため、その費用が不要となった。また、細胞の凍結保存に用いるプレートを小さいものにしたため、効率的に実験を行うことが可能となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はスフィアの固定技術を確立する必要があるが、類似の研究もこれまでにはあまり行われておらず、どの程度の実験が必要となるか予測困難である。したがって、次年度に持ち越された研究費については、固定条件の確立のために必要となるものと考えている。また、実際に使用可能なin vitro試験システムとするためには、さまざまな細胞についても同様の方法が可能かどうかを検討する必要がある。もし次年度繰り越した金額に余裕があれば、その他の細胞にも対象を広げて検討を行う予定である。
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