研究課題/領域番号 |
16K15816
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
森 士朗 東北大学, 大学病院, 講師 (80230069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リンパ節転移 / リンパ節転移モデル / リンパ節腫脹マウス / 癌化学療法 / リンパ行性癌化学療法 / 抗癌剤封入ナノ粒子 / リンパ節介在血行性転移 / 口腔癌 |
研究実績の概要 |
口腔癌の所属リンパ節転移に対する根治的治療には、頸部郭清術等の侵襲性の高い治療が必要である。しかし、人口の高齢化に伴い全身状態が転移リンパ節に対する治療に耐えられず、根治的治療を断念せざるを得ない症例が増加している。従って、低侵襲の転移リンパ節の根治的治療法の開発は喫緊の課題である。本研究の目的は、低用量の抗癌剤での根治的な転移リンパ節の治療を可能にするために、リンパ行性の薬剤投与法を検討し、さらに、転移リンパ節内への薬剤貯留時間を高め、薬剤の導入効率が高い抗癌剤封入ナノ粒子を開発するとともに、薬剤送達性を高めるナノ・マイクロバブル併用超音波照射システムを開発することである。本研究では、実験動物として我々が樹立したリンパ節腫脹自然発症マウス、MXH10/Mo/lprマウス、腫瘍細胞としてルシフェラーゼ発現腫瘍細胞を用いて以下の実験を行う。1) ガス封入ナノ・マイクロバブルおよびICG封入ナノ粒子を作製し、リンパネットワークにおいて、転移モデルリンパ節の上流のリンパ節にナノ・マイクロバブルやICG封入ナノ粒子を注入し、高周波超音波画像解析装置、生体発光画像解析装置、および蛍光実体顕微鏡を用いて、リンパ行性薬剤投与における生体内での薬剤の動態を検討する。2)抗癌剤封入ナノ粒子を作製し、転移モデルリンパ節にリンパ行性に抗癌剤封入ナノ粒子とナノ・マイクロバブルを投与し、超音波照射併用による抗腫瘍効果について、上記画像解析装置を用いて解析し、病理組織学的にも抗腫瘍効果を検証する。平成28年度においては、上記1)に関して検討し、リンパネットワークにおける上流のリンパ節内に薬剤を注入することにより、リンパ管を介して下流のリンパ節に超選択的に薬剤を送達させることが可能であることを確認し、送達した薬剤はリンパ節内に長時間貯留することを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、ヒトのリンパ節と同等の大きさにリンパ節が腫脹する近交系マウスとこのマウスに生着するルシフェラーゼ発現腫瘍細胞株を樹立し、移植した腫瘍細胞の動態や転移・増殖の過程をリアルタイムで観察できるリンパ節転移モデルを開発した。また、このマウスのリンパ・血管ネットワークを解剖学的に詳細に検討し、腫瘍細胞の動態を解析することによりリンパ行性のリンパ節転移と並行して転移リンパ節を起点として遠隔転移病巣が形成されるリンパ節介在性血行性転移という新たな転移メカニズムを見出した。さらに、リンパ行性の薬剤投与が、転移リンパ節の低侵襲・根治的治療として有望であり、臨床的にも技術的に可能であることを示してきた。また、抗癌剤としてドキソルビシンを用いたナノ粒子を作製した。ドキソルビシンは蛍光を発することから、リンパ行性に投与した標的リンパ節の凍結切片を作製することにより、リンパ節内の薬剤分布を確認することができ、リンパ行性癌化学療法の病理組織学的解析に極めて有用である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトのリンパ節と同等の大きさにリンパ節が腫脹する近交系マウスとこのマウスに生着するルシフェラーゼ発現腫瘍細胞株を用いて作製した転移モデルリンパ節に、作製した抗癌剤封入ナノ粒子とナノ・マイクロバブルを投与し、超音波照射併用による抗腫瘍効果について、高周波超音波画像解析装置、生体発光画像解析装置、および蛍光実体顕微鏡を用いて、腫瘍細胞の動態や転移・増殖の過程や本研究で提唱しているリンパ行性癌化学療法の奏功性について、リアルタイムで解析するとともに、病理組織学的にも抗腫瘍効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を効率的に実施した結果、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度請求額と合わせ、平成29年度の研究遂行に使用する予定である。
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