研究実績の概要 |
研究はラットを用いて2方向で行い、まず咀嚼筋の 1 つである咬筋に外科的損傷を加え、手術や外傷等の比較的侵襲の大きい筋損傷を想定した再現性のある咀嚼筋損傷モデルを作製した。そして外科的侵襲による骨格筋損傷、特に顎口腔領域の骨格筋損傷に対しての新たな治療法を確立するために、SV ペプチドが損傷骨格筋の再生治癒に及ぼす影響を生理学的機能評価および形態学的評価を用いて検討を行った。 本研究より SV ペプチドの投与は骨格筋の持つ自己再生能力を賦活化し、筋損傷後の機能回復に有意に働くことが示され、SV ペプチドが有効な筋機能再生治療の 1 つとなる可能性が示唆された。 さらに横紋構造を有する骨格筋の前駆細胞にSVペプチドが如何なる生物学的特性変化を及ぼすかを細胞生物学的アプローチにより明らかにするとともに,瘢痕線維化治癒を伴う重度骨格筋損傷条件下において,SVペプチドが再生修復過程に如何なる影響を及ぼすか組織学的検討を行った。その結果、SV ペプチドは筋芽細胞の増殖能,遊走能,移動能を賦活化させ、筋管細胞分化誘導因子である Myogenin の発現を上昇させることで、骨格筋再生が促進させることが示唆された.これらの結果は軟口蓋の手術における機能再生にSVペプチドが有用であることを結論づけるものである。 咬筋を含む頭頸部の骨格筋は,四肢筋肉に比較し筋芽細胞の増殖速度が遅く,損傷後の治癒期間が長いことから,線維性結合組織の残存が多いと言われている47,48)。頭頸部外傷や手術時に SV ペプチドを利用することにより,骨格筋再生が促進され,瘢痕形成抑制や機能障害を抑制する生体材料の開発に繋がることが期待できる。すなわちSVシートの臨床応用に向かえる結果を得たと考える。次のステップへの基本結果となった。
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