研究課題/領域番号 |
16K15823
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岡本 哲治 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (00169153)
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研究分担者 |
濱田 充子 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (30760318)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 無血清培養 / フィーダー細胞フリー培養 / 口腔顎顔面遺伝性疾患 / ゲノム編集 / CRISPR/Cas9 / ゲノム手術 / 病原変異遺伝子 |
研究実績の概要 |
我々は、口腔顎顔面遺伝性疾患患者由来体細胞の初代培養及び初期化の全プロセスを、宿主染色体に遺伝子挿入がないセンダイウイルスベクター(SeVdp)及び当科で開発した完全無血清・フィーダーフリーの培養系を用いて行い、各種疾患特異的iPSCの樹立・長期維持に成功し、報告してきた。現在までに、基底細胞母斑症候群、Cowden症候群、鎖骨頭蓋異形成症(CCD) (Runx2, aa.R225Q)やヌーナン症候群(NS)、特異的iPS細胞を樹立してきた。特に、鎖骨頭蓋異形成症(CCD) (Runx2, aa.R225Q)やヌーナン症候群(NS) (Kras, aa.D153V)患者由来iPSCsにおいては、SCIDマウスでのテラトーマ組織における軟骨組織は、健常人iPSC由来のそれと比較し、細胞が膨化し軟骨基質が疎な患者の疾患病態を反映した組織像を示したことから、これら疾患特異的iPSCの機能解析にin vivoでのテラトーマ形成法が有用であることを示した。。今回、これらiPSCsを用いて、in vitroでの無血清培養系を用いた細胞増殖シグナル及び軟骨分化誘導解析を行い、その機能解析を行うことで疾患研究への有用性を検討した。その結果、RASの活性化率をpull down assay法及びWB法にて検討したところ、健常人iPSCと比較してNS-iPSCではRASの恒常的活性化を認めたことから、NS-iPSCではKras遺伝子の変異に基づくRASの機能亢進が生じていることが明らかとなった。また、無血清3次元培養系を用いてCCD-iPSC及びNS-iPSCから軟骨細胞への分化誘導を行ったところ、テラトーマと同様の疎な軟骨基質からなる軟骨組織を形成した。 これら疾患特異的iPSCsは、疾患病態の一部をin vitro及びin vivoで再現可能であることが示された。血清や未知の成分、フィーダー細胞などの不確定要素を完全に排除した、再現性の高い本iPSC誘導・培養系は、疾患モデルの確立に有用であることが示され、各種疾患の分子・細胞レベルでの病態解明及び治療法開発への応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種疾患由来iPS細胞はin vitro及びin vivoにおいて疾患のphenotyoeを反映していることを明らかにしたことから、 今後、そのphenotypeを指標にゲノム手術の効果を評価するアッセイ系が確立できたことから。
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今後の研究の推進方策 |
完全無血清培養系でのiPSC誘導・培養系は、再現性が高く、疾患モデルの確立や各種疾患の分子・細胞レベルでの病態解明及び治療法開発への応用が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
CRISPR/Cas9によるゲノム編集関係の試薬購入が次年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度よりCRISPR/Cas9によるゲノム編集実験を開始するので、支障なく執行できる。
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