研究課題
破骨細胞を骨形成能を有する新規担体(DNA/プロタミン複合体)上で破骨細胞および骨芽細胞を培養増加させ、ビスフォスフォネート製剤関連顎骨壊死の動物モデルに移植して、顎骨壊死の新規治療法を目指している。サケの白子からDNA/プロタミン複合体を作成し、円板上に加工した。DNA/プロタミン複合体上の細胞生存率について、骨芽細胞株MC3T3-E1を用いて確認したところ、95%以上で、線維芽細胞と同様の優れた生体親和性を示すことが確認された。次に、マウス(5週齢 オス ddY mice)長管骨から骨髄細胞を採取して、M-CSF (50 ng/ml)+RANKL (80 ng/ml)にて培養し、単核の前破骨細胞へ分化誘導させた。デイスパーゼにて培養デイッシュから単核前破骨細胞を遊離させて回収し、円板状にしたDNA/プロタミン複合体上に播種して生存率を確認するとともに、RANKL添加によって多核破骨細胞への分化能をDNA/プロタミン複合体上で維持できるか否かを調べた。その結果、単核前破骨細胞の生存率は7日間で60%程度であり、そのうち50%が多核破骨細胞へ分化できた。分化能をさらに向上させる条件を探索中である。一方、骨芽細胞の骨形成能に対するDNA/プロタミン複合体の効果を調べる上で、DNA/プロタミン複合体の中のDNAに着目した。骨芽細胞株MC3T3-E1にDNAを加えるとアルカリフォスファターゼやRunx2およびOsterixなど骨形成関連分子の発現が亢進することが免疫染色、RT-PCRおよびウエスタンブロッティングによって明らかとなった。DNAから遊離されるリン酸にも着目し、DNAおよびリン酸イオンの骨芽細胞や破骨細胞に対する効果を検索中である。
2: おおむね順調に進展している
DNA/プロタミン複合体をサケ白子から作成し、円板上に加工し、DNA/プロタミン複合体上で該当細胞を培養し、その細胞生存率を検討したところ、骨芽細胞株MC3T3-E1の生存率は良好であったが、マウス単核前破骨細胞の生存率は期待したほど高くはなかった。しかし、単核前破骨細胞から多核破骨細胞への分化はDNA/プロタミン複合体上でも維持できたことは成果であった。ラット腹腔にゾレドロン酸を注入し、マイクロCT分析を行い、疾患の動物モデル作製に着手できた。一方、骨芽細胞はDNA/プロタミン複合体上でも分化能を維持できた。さらに、DNA/プロタミン複合体の中の、DNAに骨誘導能があることを示すデータが得られた。このことはDNA/プロタミン複合体から遊離されるリン酸の骨誘導能を示唆しており、DNAおよびリン酸が骨芽細胞および破骨細胞への効果を明らかにすれば、顎骨壊死の治療にも応用できる可能性があり、新たな展開が期待される。
DNA/プロタミン複合体の破骨細胞デリバリー担体としての有効性を引き続き研究するが、当初は破骨細胞の輸送を主体に計画していたが、実験を進める上で、顎骨壊死の治療において破骨細胞の復活のみならず骨芽細胞を増やすことが、両細胞のカップリングを推進して骨ターンオーバーを亢進するのに効率がよいことが発想された。従って、骨芽細胞と破骨細胞の共存体を輸送する方策も研究する必要がある。そのような観点の上で、今回DNA/プロタミン複合体のDNAが、骨芽細胞の骨形成促進作用の中心的なファクターであることが示されつつあり、特にDNAから遊離されるリン酸が重要であることが示唆された。従って平成29年度はDNA/プロタミン複合体のDNAおよびリン酸が破骨細胞の活性化に及ぼすメカニズムを検討し、DNA/プロタミン複合体と破骨細胞分化の効率的な培養輸送条件を見出すことに専念したい。そのために、DNA由来のリン酸が破骨細胞および骨芽細胞の老化を抑制し破骨細胞および骨芽細胞の寿命を延ばすことに寄与する可能性をin vitro実験系で検索したい。また、顎骨壊死の誘発においてビスフォスフォネートと並んで注目されている抗RANKL抗体(デノスマブ)の破骨細胞に対する効果を調べ、デノスマブの効果に対してDNA/プロタミン複合体、DNAおよびリン酸が拮抗できるか否かを確かめたい。破骨細胞・骨芽細胞を載せたDNA/プロタミン複合体をラット頭蓋骨欠損部およびマウス抜歯窩に移植して細胞の生存性と骨形成性を検討する。また、
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