研究課題/領域番号 |
16K15832
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
池邉 哲郎 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (20202913)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 顎骨壊死 / 破骨細胞 / 細胞デリバリー / ARONJ |
研究実績の概要 |
マウス骨髄細胞から誘導した単核前破骨細胞を円板状に加工した新規担体(DNA/プロタミン複合体)上で培養し、M-CSF (50ng/ml)+RANKL (80ng/ml)で処理することによって多核成熟破骨細胞に分化できることを、TRAP染色で確認した。また破骨細胞をIL-1αで活性化すると転写因子NF-kBが核内に移行することをNF-kBp65抗体による免疫染色にて確認し、さらに円板上のpit formationも確認された。このことはからDNA/プロタミン複合体上で誘導した破骨細胞が破骨細胞として機能することが示唆された。一方、培養骨芽細胞をDNA/プロタミン複合体の構成要素であるDNAで処理すると骨芽細胞のナトリウム依存性リン酸輸送体,SLC20A1 および SLC34A2の発現が上昇することを見出した。昨年度の研究で見出した骨芽細胞のRunx2やOsterixなどの骨形成関連分子の発現をDNAが亢進する機序として、リン酸輸送が関与していることが考えられた。これらの結果から、DNA/プロタミン複合体上の破骨細胞を顎骨壊死部に移植した際、骨吸収能だけでなく骨新生も刺激し、骨代謝(骨リモデリング)の回復に有利になることが示唆された。同素材をマウス抜歯窩に填入して実験を進めている。 さらに破骨細胞の担体への応用として新規の高分子被覆型カーボンナノチューブについて検討した。カーボンナノチューブは分散安定性に優れ、マウスに投与すると肝臓に主に集積するが14日以内にすべて排泄された。さらに近赤外線を照射すると40℃以上に発熱した。この高分子被覆型カーボンナノチューブをDNAと混合して新規素材をつくり、破骨細胞および骨芽細胞との細胞親和性と近赤外線照射による発熱効果を解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規担体DNA/プロタミン複合体上で培養した破骨細胞の破骨細胞特性(TRAP陽性、NF-kB活性化、pit formation)を確認することができた。DNA/プロタミン複合体から遊離するDNA(サーモン由来)が骨芽細胞のリン酸輸送体の発現を亢進して骨芽細胞による骨新生を促進することが確認された。この担体を使用すれば破骨細胞のデリバリーのみならず骨新生も誘導できるかもしれない。しかし、DNA/プロタミン複合体上の破骨細胞をマウス抜歯窩に移植してみたが今のところマイクロCTでは抜歯窩の治癒過程に変化を確認できていない。マウス頭蓋骨に移植した際に破骨細胞の活性をまだ確認できていない。このようにin vivoの実験系が進行していない。また、新規のカーボンナノチューブの研究に着手し、高分子被覆をすることによって凝集しなくなり分散安定性が向上した。このような高分子被覆型カーボンナノチューブによってマウスに静注した際の臓器特異性があきらかとなった。また、生体親和性があり近赤外線照射によって温熱効果があることを確認できた。しかし、本素材とDNAとの複合体の作製がまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
まず、高分子被覆型カーボンナノチューブをDNAと混合して新規素材をつくり、破骨細胞および骨芽細胞との細胞親和性と近赤外線照射による発熱効果を解析する。次に、高分子被覆型カーボンナノチューブをDNAに混合した新規素材をマウス頭蓋骨欠損部に填入した上で、温熱を発生させることによる新生骨誘導能を解析したい。それを確認した後、マウスの臼歯抜歯窩とマウス頭蓋骨欠損部に、①DNA/プロタミン複合体、②カーボンナノチューブ/DNA複合体(w/o近赤外線照射)、③破骨細胞+DNA/プロタミン複合体、④破骨細胞+カーボンナノチューブ/DNA複合体(w/o近赤外線照射)、をそれぞれ移植(填入)し、骨修復の過程をマイクロCTと病理組織学的観察により解析する。また、マウスにビスフォスフォネートを静注した後、抜歯と細菌感染によって顎骨壊死を誘導する動物モデルにおいて、抜歯窩周囲の粘膜骨膜を剥離し、壊死骨周囲に、①DNA/プロタミン複合体、②破骨細胞+DNA/プロタミン複合体、③カーボンナノチューブ/DNA複合体、④カーボンナノチューブ/DNA複合体(近赤外線照射あり)、の処理を施し、本素材による骨リモデリングの回復を検証する。
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