DNA/プロタミン複合体上での破骨細胞培養系は確立したが、今年度は輸送体としての新素材として高分子被覆型カーボンナノチューブとDNAとの複合体を作製した。高分子被覆型カーボンナノチューブは近赤外線を照射されると40℃近く発熱した。破骨細胞や骨芽細胞に対する発熱の効果を解析した。カーボンナノチューブ/DNA複合体上で両細胞を培養しても毒性はなく、両細胞の分子マーカー発現が認められた。当初計画では破骨細胞輸送体としてDNA/プロタミン複合体のみを考えていたが、カーボンナノチューブ/DNA複合体も試みることとした。マウス頭蓋骨欠損部に①DNA/プロタミン複合体と②カーボンナノチューブ/DNA複合体をそれぞれ填入し、新生骨誘導能を解析すると、対照群と比較して①②ともに骨誘導の促進が見られた。しかし、近赤外線照射による発熱の効果は見られなかった。次に、分化破骨細胞または骨芽細胞MC3T3-E1を保持した両素材をマウス頭蓋骨欠損部に移植して、3か月後にマイクロCTと病理組織学的観察により解析すると、両素材①②とも細胞を保持していた方が高い骨新生を示した。破骨細胞よりも骨芽細胞の方が高い骨新生能を示した。ビスフォスフォネートを腹腔内投与したマウス頭蓋骨欠損部に同様に移植するビスフォスフォネート非投与マウスと同様な結果であった。ビスフォスフォネートをマウス腹腔内投与した後、下顎臼歯を抜歯し、そこに両素材①②を移植して抜歯窩を粘膜で閉鎖した。その結果は対照群と比較して抜歯窩の骨新生促進は認められなかった。マウス顎骨壊死モデルでの良好な結果は得られていないが、今後の顎骨壊死の新規治療法への期待が持てる結果であった。
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