研究課題/領域番号 |
16K15834
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松林 幸枝 東京大学, 医学部附属病院, 病院診療医 (80400513)
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研究分担者 |
大久保 和美 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (10396715)
菅野 勇樹 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (80451813) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 骨再生 / フルカスタムメイド |
研究実績の概要 |
本年度は、マウスiPS細胞の骨分化誘導の検討に先立ち、研究室で多くの知見を保有する、マウスiPS細胞iPS-MEF-Ng-178B-5株を用いた中胚葉系の細胞への分化誘導について詳細な検討を実施した。具体的には、前年度に培養・分化誘導した細胞について、mRNAの抽出、cDNAへの逆転写、およびリアルタイムPCR法による遺伝子発現の経時的推移の評価を行った。結果、多能性マーカーであるnanogの発現は、分化誘導の後半になると減弱したことが示された。この結果は、細胞の培養時に観察された、nanogのプロモータに導入したGFPの蛍光励起が経時的に減弱したことと一致している。また、初期中胚葉系のマーカーであるbrachyuryの発現は培養期間中に亢進した時期がみられたことが示された。しかしながら、サンプル間のばらつきが目立つことから、培養方法等に改善の余地があることが考えられた。 本年度は、並行して研究室でより多くの知見を有する、ヒトiPS細胞から中胚葉系細胞の分化誘導方法について検討した。研究室で有するプロトコールに則りヒトiPS細胞由来中胚葉系細胞に分化させたものをヌードマウス背部皮下に移植し、8週間の経過観察を行った。 詳細は、解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスiPS細胞iPS-MEF-Ng-178B-5株を用いた中胚葉系細胞への分化誘導検討と解析により、nanogのプロモータに導入したGFPの蛍光励起と同様に、nanogの遺伝子発現が経時的に減弱することが観察された。また、brachyuryの発現が亢進する時期がみられたことから、中胚葉系への分化誘導を進めることができると示された。しかしながら、遺伝子発現の推移にサンプル間のばらつきが見られることなどを踏まえ、培養方法に改善の余地があると考えられた。 今年度は、研究室でより多くの知見を有するヒトiPS細胞から中胚葉系細胞への分化誘導、組織化とin vivoへの移植の検討を行ったところ、移植した細胞から再生骨の形成が観察された。ヒトiPS細胞から中胚葉系細胞への分化誘導法と、マウスiPS細胞から中胚葉系細胞への分化誘導法には共通点が多いことから、今後マウスiPS細胞の骨分化が速やかに進捗するものと考える。 アガロースモールドを用いた三次元培養や、TCPを用いた三次元造形、およびbFGFの徐放材などは研究室で保有する技術であるので、平成29年度に得られた知見をもとに、マウスiPS細胞由来骨細胞、TCPやbFGFを組み合わせた三次元再生骨組織作製は順調に進捗するものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
培養上清やmRNAの発現量、各種染色などによる解析を進め、マウスiPS細胞由来骨細胞の分化誘導法の最適化を進める。さらに、アガロースモールドやTCPやbFGFを組み合わせた三次元再生骨組織作製方法の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
iPS細胞を使用した研究には多額の費用が必要となるため、前年度に引き続き研究室で既に保有する細胞や試薬等を活用して小さな培養規模で検討を進めた。 結果、予定よりも順調に検討が進んだため次年度使用額が生じた。 次年度計画では、培養規模等を拡大しさらに加速度的に検討を進めていく必要があるため、この費用に充てる予定である。
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