研究課題/領域番号 |
16K15840
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉田 教明 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (40230750)
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研究分担者 |
古賀 義之 長崎大学, 病院(歯学系), 講師 (50175329)
森田 幸子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (00631574)
中村 文 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (50711959)
藤下 あゆみ 長崎大学, 病院(歯学系), 医員 (30755723)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 顎運動 / 筋活動 / モーションキャチャー / 6自由度 / 神経伝達物質 |
研究実績の概要 |
本研究では、すでに光学式顎運動計測システムを開発した。本システムは、高速度カメラとモーションキャプチャーシステムを組み合わせることで、6自由度顎運動計測が可能である。さらに、計測した顎運動機能データと、対象とするマウス頭蓋の形状計測データ(マイクロCTにより撮影)を統合することにより、下顎骨上の任意の点の運動(顆頭点、臼歯点、切歯点など)を算出することが可能となった。これにより、下顎運動の視覚化が実現できた。さらには、上顎骨と下顎骨に取り付けた4つのマーカーとの解剖学的位置関係を記録することで、モーションキャプチャーシステムにより記録した6自由度顎運動をマウス骨格に関連づけることで、下顎頭の滑走運動や臼歯部における食物の粉砕臼磨運動など、ダイナミックな顎運動動態を詳細に解析することが可能となった。 神経伝達物質を投与した際の咀嚼運動制御メカニズムの解明に関して、中枢神経系へのγ-アミノ酪酸入力の影響について検討した。γ-アミノ酪酸入力を拮抗したところ、顎運動に関しては、開口量などの運動領域が拡大し、筋活動量についても咬筋、顎二腹筋ともに増強された。一方で、γ-アミノ酪酸入力を増強したところ、顎運動に関しては、開口量や側方移動量、咬合相における前方滑走距離などすべての運動パラメータが減少した。筋活動については、咬筋、顎二腹筋ともに減弱された。 咀嚼リズムについて、Total cycle lengthは、γ-アミノ酪酸入力を拮抗した場合には増加し、増強した場合には、減少した。以上の結果より、神経伝達物質の投与は、咀嚼サイクルならびに咀嚼筋のバーストパターンに影響を及ぼす可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経伝達物質の脳室内投与を行える環境が整備できたが、光学式顎運動計測システムを用いるために、実験動物のマウス頭部を拘束する必用があること、筋活動を記録するためのアタッチメントも頭部に固定する必用があることから、脳室内投与に必用な頭頂部領域を開放した状態でマウス頭部を固定する方法を検証した。しかしながら、薬剤によっては、頭部を固定する影響から、咀嚼運動に移行しない個体があり、データの採取が困難な場合があった。
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今後の研究の推進方策 |
顎運動計測システムについて、顎運動機能データと、形状計測データの統合および上顎骨と下顎骨上のマーカーとの解剖学的位置関係を記録することで、マイクロCT より構築した3次画像座標系からモーションキャプチャーシステム座標系へ各フレームにおけるマーカー座標を座標変換(剛体変換)することにより、下顎骨上の任意の点(下顎切歯点、顆頭点、臼歯点など)における運動経路の視覚化に向けて手法を進展させる。神経伝達物質の投与が咀嚼・嚥下の運動制御に及ぼす影響についての概要が把握できる体制をさらに整備し、中枢神経系への種々の神経伝達物質の影響について検討し、詳細な解析を行う。脳室内投与に必用な頭頂部領域を開放した状態でマウス頭部を固定する方法を検証したところ、薬剤によっては、頭部を固定する影響から、咀嚼運動に移行しない個体もいることから、頭部固定状態での給餌法について検討が必要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:本年度においては、光学式6自由度顎運動計測システムの精度向上を優先的に進めてきたため、動物実験に必用な経費を次年度に繰り越すことになったため。 使用計画:計測システムの開発ならびに精度向上については終了したため、本年度は、より多くの顎運動データの取得を行う予定である。
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