研究課題/領域番号 |
16K15845
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
多部田 康一 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20401763)
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研究分担者 |
谷口 正之 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00163634)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯学 / コメ / ペプチド / 歯周炎 |
研究実績の概要 |
本研究は、歯周病に対抗するための新たな付加価値型口腔ケアアプリケーションの開発を目指して、コメ由来の機能ペプチドを検索することを目的としている。コメのα-アミラーゼの部分配列である18残基のアミノ酸からなるAmyΙ-1-18ペプチド(Taniguchi M et al., Pept Sci, 2015.)は,P. gingivalis、C. albicans、S. mutansなどの病原微生物に対して抗菌活性を有することが報告されている。また、マクロファージを用いた実験において、LPS刺激によって誘導される炎症性サイトカイン産生を抑制する、抗炎症作用も有することを確認した。そこで、このAmyΙ-1-18ペプチドに着目し、歯周炎モデルマウスにおいて誘導される炎症応答に及ぼす影響を検討した。 マウスC57BL/6NにAmyΙ-1-18ペプチドを1回/日、計14回経口投与した。その後、上顎第二臼歯に絹糸を結紮し、計7日間、実験的歯周炎を誘導した。顎骨吸収は実体顕微鏡下でセメントエナメル境から歯槽骨頂で囲まれる歯根面積を測定した。血清中のIL-6レベルはELISA法にて測定した。さらに、歯肉組織における炎症性サイトカインの遺伝子発現は、qPCR法を用いて解析した。 その結果、AmyΙ-1-18ペプチド投与により顎骨吸収の抑制が認められた。血清中IL-6レベルはペプチド投与により有意に抑制が認められた。歯肉組織においてもIL-6遺伝子発現が有意に抑制されていたことから、歯肉局所におけるAmyΙ-1-18ペプチドの抗炎症作用が血清中のサイトカインレベルにも影響を及ぼしている可能性が示唆された。以上より、歯周炎モデルマウスにおいてAmyΙ-1-18ペプチドが抗炎症作用を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、日本人の主食として身近な食品であるコメを原材料とした加水分解産物を標的とする予定だったが、予備実験において、歯周病原細菌に対する抗菌活性が想定よりも弱いものであったため、コメのアミラーゼを由来とした合成ペプチドであるAmyΙ-1-18をターゲットとして機能評価を行った。これまでに、AmyΙ-1-18は歯周病原細菌であるP. gingivalisに対して抗菌活性を有することを確認している。また、絹糸リガチャーの結紮により実験的歯周炎を誘導したマウスにおいて、同ペプチドが、抗炎症作用を示し、歯槽骨破壊を抑制することが明らかとなった。このような抗菌・抗炎症作用は、歯周病に対抗する新しいペプチド医薬開発の基礎となるデータであり、一定の成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
歯周炎モデルマウスで示された抗炎症作用については、申請時の計画に基づき、引き続き実験を行う。また、加えて、そのメカニズムを明らかとするため、マウスマクロファージを用い、炎症性サイトカインの抑制に関わる標的分子の同定やシグナリング経路への影響を検討する予定である。 さらに、歯周病原細菌に対する抗菌活性に関連して、バイオフィルムにペプチドが及ぼす影響や抗菌活性の細菌特異性について明らかにするための実験を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
歯周炎モデルマウスで示された抗炎症作用については、申請時の計画に基づき、引き続き実験を行うが、年度をまたいでの計画となり、次年度使用に繰り越すことで適切かつ効果的に使用ができるため。
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次年度使用額の使用計画 |
歯周炎モデルマウスで示された抗炎症作用についてH29年度に引き続き実験を行う。
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