研究課題/領域番号 |
16K15847
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山本 松男 昭和大学, 歯学部, 教授 (50332896)
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研究分担者 |
板部 洋之 昭和大学, 薬学部, 教授 (30203079)
小出 容子 昭和大学, 歯学部, 助教 (40407466)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 歯周病 / 好中球 / 歯肉溝浸出液 / NETosis / NETs |
研究実績の概要 |
硬組織である歯は口腔粘上皮を突き破って存在する。歯は歯槽骨に直接結合せず、歯根膜と呼ばれる靱帯組織を介して骨に結合し、歯の生えぎわ(歯肉の辺縁部)では上皮性結合により常在菌や歯周病原菌の侵入を防ぐ。何らかの要因によって侵襲と防御の均衡が崩れると炎症が拡大し、上皮性付着や線維性付着が破壊され歯周組織に炎症の波及した歯周炎に進展する。生体防御として、血漿由来の組織液である歯肉溝浸出液(以下、GCF)や好中球が歯周組織に分布する毛細血管から血管外へ、そして上皮を通過して歯肉溝や歯周ポケットに到達する。歯周ポケットにおいて好中球による微生物の貪食が知られているが、近年は細胞外トラップ(以下、NETs)による防御の報告が散見される。我々はこれまでの解析により、歯肉溝滲出液中にはNETosisに深く関与するミエロペルオキシダーゼ(MPO)、ヒストンH2-4、S100タンパク質等が存在することを明らかにした。しかし、細菌感染による炎症環境の中でNETosisが生じるメカニズムには不明な点が多い。そこで、①NETosisが起こるメカニズムの解析、②GCFに含まれるNETosis起因性物資の検出、の2つ視点より研究計画を立案した。 ①について、好中球様に分化誘導の可能なヒト前骨髄球細胞株HL-60と、血液より採取したヒト好中球を用いてin vitro実験評価系を構築した。レチノイン酸誘導体により好中球様に分化させたHL-60細胞株においてツニカマイシンで、ヒト好中球ではPMA、LDL、酸化LDLによる刺激で、NETosisをおこさせることができた。②について、健常者ボランティアよりGCFをペーパーポイントを用いて採取し、質量分析により含まれるタンパク質の種類と存在比の分析を行った。ペプチドに非放射性同位体よる標識を行い二次質量分析解析を行う準備手段の確立がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitro評価系において、NETosisを顕微鏡で目視で行った。定性的な根拠となる確認手段が必要であることが判明した。 歯肉溝浸出液の成分の分析として質量分析法、iTRAQ質量分析法(成分の相対的比較)を計画し、歯周病患者から採取した歯肉溝浸出液の解析を計画している。しかし、初年度では、健常者ボランティの協力の下採取方法の確立を行ったが、採取した歯肉溝浸出液に含まれる総タンパク質量が解析に対して不足する傾向が明らかとなり、サンプル調整法の見直しを行ったために、計画通りの患者からのサンプリングができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro系での定性的な解析については、先行論文等で報告のある、NETs関連タンパク質の免疫染色等による確認手法を取り入れ、評価結果の信頼性向上をはかるものとする。 歯肉溝浸出液のサンプリングについて、第一段階としてサンプル採取の方法を再確認し、十分な量のサンプル採取が可能になるような採取方法の確立を急ぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の一部(ピペット先端、消耗品)が当初の見込みよりも少なく研究が進行したために、一箱購入が少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究資金支出にも十分気を配りながら、計画の通りに進める。
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