研究課題/領域番号 |
16K15850
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
笹野 高嗣 東北大学, 歯学研究科, 教授 (10125560)
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研究分担者 |
菅原 俊二 東北大学, 歯学研究科, 教授 (10241639)
市川 博之 東北大学, 歯学研究科, 教授 (20193435)
佐藤 しづ子 東北大学, 歯学研究科, 助教 (60225274)
庄司 憲明 東北大学, 大学病院, 講師 (70250800)
飯久保 正弘 東北大学, 歯学研究科, 講師 (80302157)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 味覚障害 / うま味 / 唾液 |
研究実績の概要 |
我が国では超高齢化や食生活の変化などを背景に味覚障害者が急増している。味覚障害は単なる感覚障害に留まらず、高齢者では食欲不振から体重減少、さらに体調不良に陥る場合が多い。我々は、他の基本4味(甘、酸、塩、苦)の感受性は正常でありながら、「うま味」感受性のみが低下するため極度の食欲不振に陥る高齢者を数多く経験し報告している。本研究では、「うま味感受性低下」は、唾液中グルタミン酸塩および味覚受容体遺伝子に起因するという仮説を立証することにより、「うま味感受性低下」に対する診断と治療の標準化・均霑化にチャレンジし、国民の健康長寿の実現に貢献することを目的としている。 当該年度は、味覚障害を訴えて来院した患者に対して、研究の説明と同意を得て、甘・酸・塩・苦・うま味感受性検査および唾液採取を行った。甘・酸・塩・苦味の感受性検査は、臨床で広く用いられている濾紙ディスク法を用いて行い、うま味感受性検査は、グルタミン酸ナトリウムを試薬として用いた。さらに、採取した唾液試料からTotal-RNAを抽出(High Pure tissue Kit, Roche)し、RNAの濃度測定を行い、その後、逆転写反応(Transcriptor First Strand cDNA Synthesis Kit.Roche, Mastercycler, Eppendorf)によりcDNAを作成する。cDNAをテンプレートとしてリアルタイムPCR定量解析(CFX96,Bio-Rad)を行うことを進めている。 この結果の一部は既に公表し、新聞やテレビなどのマスコミでも報じられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の項に示したように、当初の計画を当該年度において順調に進めているところである。研究内容の一部は、後述する業績として一定の結果を示している。また、新聞やテレビなどに数多く報道され、社会貢献の任を果たしている。
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今後の研究の推進方策 |
研究テーマである「うま味感受性低下」の治療として、新たに考案したグルタミン酸塩の補充療法を行う。具体的な方法として、第一に、我々が唾液分泌改善法(味覚-唾液反射)として臨床応用している日本古来の昆布だしを用いる(Sasano T et al. Flavour, 2015)。この方法は食品を用いるため安全である(甲状腺疾患の患者を除く)。改善がみられない場合には、グルタミン酸ナトリウム粉末の経口投与について検討する。この場合、FAO/WHO (Food and Agriculture Organization of the United Nations /WHO)および米国 GRAS(Generally Recognized as Safe)の基準に則った安全領域で使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者サンプルを採取することが本研究の出発点となるが、当初予想した患者数よりも実際に病院を受診した患者数が僅かに少なかったため、サンプル分析に要する費用が残高として残ったものである。
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次年度使用額の使用計画 |
患者数を増やすことを考え、他の医療施設に協力を呼びかけることとする。
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