研究課題/領域番号 |
16K15853
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
天野 敦雄 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50193024)
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研究分担者 |
竹内 洋輝 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (40572186)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Porphyromonas gingivalis / 歯周病 / 細胞内寄生 / Rab14 / RalA / VAMP2 |
研究実績の概要 |
歯周病菌Porphyromonas gingivalisはバイオフィルムのみならず、口腔の細胞内に生息して口腔内定着を果たしている。本研究課題は、細胞内定着に関わる宿主分子基盤の解析を目的としている。平成28年度の目標は、ゴルジ体からの膜小胞の輸送を制御するRab GTPase の1つであるRab14 につき、ヒト歯肉上皮細胞へ侵入したP. gingivalisの細胞内動態に及ぼす影響を調べることであった。 蛍光蛋白質EGFP とRab14 の融合蛋白質を歯肉上皮細胞へ発現させ、細胞内に侵入したP. gingivalis との共局在率を共焦点顕微鏡で観察した結果、感染後1時間で本菌とEGFP-Rab14の共局在率はピークを示し、感染後5時間にかけ経時的に減少した。 Rab14の恒常活性化型変異体であるRab14 Q70L、不活性型変異体であるS25Nを歯肉上皮細胞に発現させ、P. gingivalis への局在化へ及ぼす影響を観察した。感染後1時間において、細胞内P. gingivalis とRab14 Q70L は野生型と同程度の共局在を示したのに対し、Rab14 S25NはP. gingivalis とあまり共局在を示さなかった。これらの結果より、P. gingivalis の感染によりRab14 の活性化、および本菌を含むエンドソームへのRab14 の局在化を誘導している可能性が考えられた。 P. gingivalis を内包するRab14 陽性のエンドソームは、PI(3)PマーカーであるFYVE domain、アクチン細胞骨格系の再構成を制御するGTPaseであるRalA、ファストリサイクリングの制御因子であるRab4A、Rab4A の結合因子であるRUFY1、細胞内輸送小胞の融合を担うSNAREタンパク質の一つであるVAMP2と非常によく共局在 を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画における平成28年度の目標は、ゴルジ体からの膜小胞の輸送を制御するRab GTPase の1つであるRab14 につき、ヒト歯肉上皮細胞へ侵入したP. gingivalisの細胞内動態に及ぼす影響を調べることであった。研究実績の概要に記載したように、本目標は過不足なく達せられた。加えて、平成29年度に向けて導入遺伝子量や薬剤耐性遺伝子を検討・変更するなどして、Rab14 に対するshRNA を安定発現する歯肉上皮細胞株を樹立したこともあり、研究進捗は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は歯周病菌の歯周組織内定着機構の分子基盤を探り、歯周組織内定着の様子を知ることである。これまでの所、目的に合致した結果が得られており、研究推進方策に変更はなく、当初の計画通り研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究のテーマである歯周病菌の宿主細胞内動態に関与する可能性が高い候補遺伝子に係る試薬(siRNA, shRNA, ベクター等)は輸入品である。今回の研究期間では、スクリーニングにより候補遺伝子が見つかったのが2月であり、本年度ではそれが間に合わず、次年度に持ち越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
輸入試薬(siRNA, shRNA, ベクター等)を予定通り購入する。
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