研究課題/領域番号 |
16K15855
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村田 尚道 岡山大学, 大学病院, 助教 (10407546)
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研究分担者 |
五福 明夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20170475)
江草 正彦 岡山大学, 大学病院, 教授 (90243485)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 摂食嚥下障害 / 健康増進 / 喉頭挙上 / システム化 / 嚥下訓練 |
研究実績の概要 |
【目 的】摂食嚥下機能は、日常生活において欠かせない機能の一つであり、その機能の破綻は生活の質(QOL)に大きな影響を与える。嚥下訓練を行うためには医療者またはその指導を受けたものが訓練を行うことが必要であるが、時間的・空間的な限度があり、今後増加する施設や在宅で生活する高齢者への対応が困難になると考えられる。 そこで、機械によって嚥下機能を評価し、嚥下機能の支援を行うことでより多くの嚥下機能低下した高齢者が食べる楽しみを維持できると考えられる。 今回、健常ボランティアに対して、メンデルソン手技を実施した際の喉頭挙上時に加わった圧力および喉頭挙上距離をもとに、喉頭挙上の支援をおこなう機器を作製したので報告する。 【方 法】喉頭挙上を保持する部分(保持部)には、適度な硬さが必要であるため材質は、ABS樹脂で作製した。形状は喉頭隆起を左右から支える指の形を模倣し、3Dプリンタ(Makerbot社製)を用いた。保持部を上下方向へ移動させる機構は、モーターおよびシャフトを用いた。 【結果およびまとめ】 作製したシステムについて、喉頭隆起を保持する力は最大15Nまで可能であり、また過度な力が加わることで保持部が下降する安全機構を組み込んだ。保持部を挙上させる速度については、最大40mm/secで移動可能であり、嚥下時喉頭挙上に追随して最大挙上時に保持できるように考慮した。 今後、本システムが嚥下時の喉頭挙上を保持するための機構を健常ボランティアで検討し、高齢者や摂食嚥下障害者へ応用したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、摂食嚥下障害により、誤嚥や窒息など生命の危機となる事故を起こし得る問題に対して、嚥下機能を客観的に評価し、嚥下機能の支援を行うことである。そのため、嚥下訓練として実施されている手法の一つであるメンデルソン手技を機械で模倣するシステム構築(以下、支援システム)を今年度の目的とした。 昨年度に行った嚥下訓練時に行われているデータ(喉頭挙上を支援するときの喉頭にかかる圧力および喉頭挙上に沿って持ち上げる移動距離)が支援システムに反映できるかを確認し、研究実績の概要で示した数値が得られた。また、仮実験に置いて支援システムを用いた挙上保持の数値は、実際の訓練時に行われている数値と比較しても同程度の値が得られていたことから、システムの大まかな概要は出来上がったと考えている。 ただし、来年度からの研究において、支援システムを健常ボランティアに使用する際、新たに施行された臨床研究法によって、特定臨床研究に該当すると考えられる。審査および研究開始時期の再検討が必要になったため、今後の研究について遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
【目 的】現在、要介護や要支援には至らないが、生活機能低下が生じている高齢者に対する取り組み(プレフレイルへの対応)が必要とされている中で、早期に摂食嚥下機能低下に気づき、正しく介入(治療や予防)するための取り組みが重要となっている。そのような高齢者に対し、施設や保健センターなどで本システムが使用できるようになれば、治療が必要な者の機能改善を早め、機能低下の評価によって介入が必要なものの選択を容易にできる。 【方 法】支援システムを用いた嚥下機能評価の精度を改善させ、喉頭挙上距離の測定が可能とする。また、支援システムの利用によって、実際に訓練を行っている場合と同様の効果(喉頭蓋反転および食道入口部の開大)について検討する。 しかし、当初の予定では、今年度は支援システムを健常ボランティアに用いて、嚥下訓練の効果を検討する予定であった。特定臨床研究の審査は、現在行われておらず、実施の時期についてもまだ連絡がない状態であるため、開始時期および予算について現在は検討できない。 本年度が最終年度となるため、上記の計画と並行して、昨年度までの研究成果を報告する準備をすすめる予定である。
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