研究課題/領域番号 |
16K15865
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
仲上 豪二朗 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (70547827)
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研究分担者 |
真田 弘美 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50143920)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 医療ビッグデータ / 在宅復帰 / 褥瘡 / DPC |
研究実績の概要 |
日本の褥瘡医療は世界一の水準にあるものの、今後の到来する褥瘡患者の爆発的増大に対応するためには褥瘡医療の標準化が必要である。それにはサンプリングに偏りのある調査では不十分であり、悉皆性の高いデータベースを利用した解析が求められる。そこで、サンプリングバイアスのない医療ビッグデータを活用し、褥瘡に関してより効率的で効果的な医療政策提言に資することを目的とし研究を行った。 急性期病院の目的は疾病の治癒・状態をコントロールし、患者を自宅に返すことであり、在宅復帰率は病院のケアの質を評価する重要なアウトカム指標である。褥瘡は在宅復帰率に影響を与えうるが、十分な報告がない。そこで、急性期病院の入院患者の褥瘡の状態と在宅復帰率の関連を、Diagnosis Procedure Combination (DPC) データベースを用いて検討した。 この後ろ向き観察研究では、2014年7月1日から31日に退院した者のうち、自宅から入院した65歳以上(N=340,124)の者を対象とした。アウトカムを在宅復帰とし、独立変数に褥瘡状態を用いた。褥瘡状態は入院時と退院時の褥瘡の有無並びに深達度から、なし、治癒、治癒傾向、維持、悪化、新規発生に分類し変数として用いた。交絡変数として、デモグラフィックデータ、併存疾患、クリティカル状態、ADL、医療処置を調査した。 入院時褥瘡の有病率は1.9%であり、入院中に発生した褥瘡は1.1%であった。多変量ロジスティック回帰分析により、褥瘡なしを基準とした場合に、褥瘡の治癒、治癒傾向、維持、悪化、新規発生の順でオッズ比が有意に低くなることが明らかとなった。以上より、在宅での褥瘡の予防、病院での褥瘡の治癒促進、病院での褥瘡発生の抑制が在宅復帰率を向上させるために有効な方策であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
同一期間内の共同研究者との連携によりDPCデータベースを使用し、褥瘡が患者アウトカムに与える影響を調査することができた。DPC病院全データを用いることで関連しうるバイアスを加味したうえで、褥瘡が与える影響を正確に推定できたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
褥瘡医療として重要な診療報酬の影響を検討することで、褥瘡に関連する患者アウトカムに与える政策の評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度はDPCデータベースを使用して褥瘡が患者アウトカムに与える影響を検討した。DPCデータベースは共同研究先でオンサイトにて解析する必要があったため、当初予定していたPCの購入を見送ったことから次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には処理負荷の高い解析を実施する予定であるので、計画通りに予算を執行する。
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