日本の褥瘡医療は世界一の水準にあるものの、今後の到来する褥瘡患者の爆発的増大に対応するためには褥瘡医療の標準化が必要である。それにはサンプリングに偏りのある調査では不十分であり、悉皆性の高いデータベースを利用した解析が求められる。そこで、サンプリングバイアスのない医療ビッグデータを活用し、褥瘡に関してより効率的で効果的な医療政策提言に資することを目的とし研究を行った。 2006年より開始されている褥瘡ハイリスク患者ケア加算は、専従の褥瘡管理者を置くことで褥瘡発生ハイリスク者に対して予防的対策を重点的に行うものであり、褥瘡医療の質向上に貢献している。しかしながら、この加算を導入することがDPC病院における褥瘡発生を低減させているかどうかは検証されていない。そこでDPCデータベースを利用し、加算導入の有無での発生率を比較した。加算が算定されている患者は重症度が高い場合が多いため、加算にかかわる要因を用いて傾向スコアを作成し、非導入病院から比較群を抽出した。その結果、褥瘡ハイリスク患者ケア加算を導入することで新規褥瘡発生率が低減されることが示された。また、generalized estimating equationsを用いて比較しても同様の結果が得られており、ロバストな結果であることが考えられた。褥瘡はリスク患者ケア加算の新規褥瘡発生抑制効果を示した初めての研究であり、専門性の高い看護師の行う褥瘡管理が臨床的に効果を有していることが明らかになった。
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