研究実績の概要 |
研究の背景:2003年のヒトゲノム計画の終了とその後の解析機器の進歩により、現在では、全てのゲノム情報の解析が、時間的にも資金的にも可能な時代を迎えた。遺伝子検査の選択肢は患者やその家族に福音をもたらした。一方で、検査の実施に関する倫理的法的社会的な体制の整備が追いつかず、国民は遺伝に関する情報に翻弄されている。そこで、申請者らは、国内外の文献レビューを通して、確定診断という予測性をもつ遺伝子検査前後の継続的ケアや、生涯変わらない遺伝情報を生きていく人々の生活を支える包括的な遺伝看護の6つのコンピテンシーおよびコンピテンシーモデルを明らかにした(寺嶋 2015)。最終年となる本年度は、このコンピテンシーモデルの成果を発展させ、新たな包括的遺伝看護のコンピテンシーの尺度を開発しその信頼性と妥当性を検討した。 目的:遺伝看護の実践能力を測定する尺度を開発し、信頼性と妥当性を検討した。 方法:遺伝看護実践能力尺度は、寺嶋ら(2005)の「遺伝看護実践能力の構造化」における構成要素を基に作成した。調査1では内容妥当性と表面妥当性の検討を行い、調査2では対象者293名のデータで構成概念妥当性と信頼性、並存妥当性の分析およびモデル適合度の検定を行った。 結果: 因子分析の結果、尺度全体のCronbach’s α係数は0.96であり、構成概念は支持された。長濱ら(2009)による協同作業認識尺度とは正の相関が1%水準で認められた。6因子21項目の仮設モデルの適合度を確認的因子分析で検討し、容認できる整合性を有していた。潜在変数―観測変数間には全質問項目において0.50以上の妥当なパス係数が得られた。 結論:遺伝看護実践能力尺度21項目6因子構造を開発し、構成概念妥当性および確認的因子分析の結果から高い妥当性と信頼性が確認された。併存妥当性は有意ではあるものの弱い相関であるため,課題が残った。
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