研究課題/領域番号 |
16K15871
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
能登 裕子 九州大学, 医学研究院, 講師 (40615910)
|
研究分担者 |
村木 里志 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (70300473)
梶原 弘平 広島大学, 医歯薬保健学研究院(保), 助教 (10437626)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地域在宅高齢者 / 運動機能測定 / 身体感覚 / 転倒予防 |
研究実績の概要 |
高齢者の転倒・転落事故防止対策は高齢者のQOLの維持・向上および医療費低減において急務である。本研究は、高齢者が生活する居住空間内での動作特性に着目し、①運動機能と年齢、転倒履歴および身体感覚と運動機能の認識との関連についての検討、②日常生活動作がモニター可能なウェアラブル端末の試作・検証、③②のウェアラブル端末を用いた居住空間内動作の測定データからリスク要因となる動作特性を抽出する。本年度は、本研究期間に挙げている3つの課題のうち、研究1「在宅高齢者の身体感覚と居住空間内環境についての実態調査」を行った。 調査は、地域在宅高齢者32名を対象に運動機能測定(握力、開眼片足起立時間、ADL 評価など)、身体感覚や運動機能の認識、転倒履歴に関する面接調査を行い、運動機能と年齢、転倒履歴および身体感覚と運動機能の認識との関連を検討した。 その結果、年齢との相関分析から、日常生活が自立している場合も加齢に伴いADLは徐々に低下し、転倒不安感は増大する傾向が示された。また、片足立脚時間はADLを反映することが推察され先行研究と同様の傾向を示した。一方、転倒不安尺度と開眼片足起立時間との関連性は、転倒不安感尺度とADLとの関連性に比べ低く、立位時のバランス能力の低下は、日常生活場面での感覚に比べ、転倒不安感の増大にはつながりにくい可能性が示唆された。転倒経験は、70歳代で最も多く、転倒状況として挙がった歩行時のつまずきや動作時のバランスの崩れは、身体感覚の変化として認識した状況と類似しており、基本動作の運動機能の低下や緩慢化が転倒に結び付いている傾向が示された。高齢者の運動機能の維持と転倒・転落事故防止対策へ、高齢者の身体感覚特性や加齢による変化をふまえた運動機能評価が加わると、より日常生活に即した介入が可能となる。今後は、動作分析により転倒リスク要因となる動作特性の抽出を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のスケジュールとしていた、平成28年度後半期までの調査を遂行し、研究1の目的および目標の示唆を得ており、平成29年度前半期の学会発表の準備中である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究1により、主観的・客観的運動機能と年齢との関係、転倒の状況と身体感覚の変化の実際についての示唆を得た。現在、インタビューデータの質的分析中である。研究1の結果をふまえて研究2「高齢者の居住空間内動作を測定するウェアラブル端末の作成と検証」を行う。研究1のインタビューデータ分析結果をもとに、屋外での基本動作も含め、転倒リスクに関連する動作の課題を検討する。また、加速度などを計測する小型センサーを衣服などに搭載したウェアラブル端末を作成する。無線式小型加速度センサー(平成28年度予算にて購入)を用いた予備実験は実施済みである。高齢者の感じる身体感覚の変化等と実際の動作、客観的指標との関連性を明らかにするため、第1段階として健常者を対象とし実験室内で動画、重心動揺、心拍数、加速度データ等を測定し、身体感覚と各動作との関連性を検証する(研究分担者:村木里志氏の所有する動作解析実験室借用予定)。対象者は若年者と高齢者を対象とし、動作は研究1の結果も考慮し、階段昇降、立ち上がり、歩行動作等を検討する。当初1段階目にて、ウェアラブル端末の検証も合わせて行う予定としていたが、運動機能を評価可能な動作特性データの抽出を優先的に行うため、2段階目として、使用性を含めたウェアラブル端末の検証(動作との関連性、精度)を行う。また、当初2段階目は、住宅内での測定を行うこととしていたが、その結果の信頼性を確保するため実験室内での測定も考慮する。これらの結果から、ウェアラブル端末の測定データと各動作との関連性を分析する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究1と並行して、住宅内を想定し、動作の測定項目と測定機器を検討する予定としていた。しかし、研究1の予備調査において、身体感覚の変化を伴う場面は屋外にも多く、かつ基本動作に生じることが明らかとなり、住環境における動作に限定せず基本動作の特性を抽出することの必要性が推測された。その結果、研究1の対象者を予定より増やし、より多くのインタビューデータの分析結果が必要となり、動作の測定項目と測定機器検討を研究2において実施することへ予定を変更したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
購入物品については研究1の結果をふまえ、研究遂行に不足する物品(測定機器)を中心に揃える。
|