前年度までに、リンパ浮腫ドレナージ技術練習シミュレータの形状とセンサーシステム、技術トレーニングのプログラムなどの設計が完了した。 最終年度は、よりリアルな感覚で幅広い手技の練習ができることを目指し、1台で患者の大腿部、背部などの複数の部位練習ができるようシミュレータ表面の形状を改良した。また、浮腫のある患者の皮膚および皮下組織の硬さやドレナージ時の伸展性の再現にこだわり、厚みと弾力の異なるシリコン素材を組み合わせる方法で、取り換え可能な2種類の皮膚モデルを開発した。浮腫の重症度による触感の違いに対応したものである。 技術習得プログラムとしては、圧迫する力と皮膚の伸展(剪断力)をノートPCのディスプレイにイメージとして表示し、自己のドレナージ手技の可視化を図るとともに、画面を区切って熟練者の手技と自分の手技を比較しながら練習ができる仕組みにした。しかしリンパ浮腫ドレナージで皮膚にかかる垂直の圧はごく弱いため、圧を感知し正確に表現するためのセンサーの種類や配置、ならびにシステム構築など時間をかけた調整が必要であった。 本シミュレータについては、協力企業が日本リンパドレナージ協会養成講習会(7月東京)、MEDICAL FAIR THAILAND 2019(9月 バンコク)、日本リンパ浮腫治療学会(10月兵庫)などの学会や展示会等で年間12回の展示を行い、参加者から技術練習におけるシミュレータのニーズや開発した機器への意見を聴取した。リンパ浮腫セラピストや指導者からは本シミュレータの有用性に関する意見を聴くことができた。 本研究では、シミュレータの開発後にシミュレータを用いた技術練習の評価、ならびに熟練者と初学者の手技の違いなどを明らかにすることを計画していたが、開発に時間がかかったため、当初の予定を遂行することができず、これらは今後の課題として残された。
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