本研究の目的は、乳がんに対する術後補助療法として化学療法もしくは内分泌療法を受ける高齢患者の認知機能障害の実態を縦断調査により明らかにすること、および高齢乳がん患者の認知機能障害の予測因子を包括的評価に基づき明らかにすることである。さらに、予測因子から認知機能障害を介しQuality of Life (QOL:生活の質)への影響を検討することを目的とした。 平成29年度に引き続き、平成30年8月31日まで研究参加者のリクルートを行った。平成29年5月にリクルートを開始してから87名の患者をリクルートした。結果、65名より研究への参加の同意が得られた。その後、平成31年3月時点で7名の脱落が確認され、58名の研究参加が得られた。研究参加者が受けた術後補助療法の内訳は、内分泌療法32名、化学療法12名、無治療14名であった。ベースライン(補助療法開始前)の時点で同意が得られた65名のうち、有効回答が得られた55名のデータを用い、Quality of Life (QOL)への影響因子をパス解析により確認した。QOLの指標として、The Functional Assessment of Cancer Therapy-General (FACT-G) version 4を用いた。結果、倦怠感が認知機能を介し、FACT-Gの下位尺度である「Functional well-being(機能的安寧)」および「FACT-Gの合計得点」に有意な影響を及ぼすことが示された。また、ソーシャルサポートがFACT-Gの下位尺度である「Emotional well-being(精神的安寧)」に直接的に有意な影響を及ぼし、IADLが「Functional well-being(機能的安寧)」に直接的に影響を及ぼす傾向が示された。
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