先行研究のレビューから心不全増悪時のウェアアラブル端末データから取得しうるデータの特徴をまず明らかにすべきであると考えられた。そこで当初の計画を変更し介入研究から前向き観察研究を行うこととした。本研究を行う前に実現可能性を検討するため、心不全患者からのウェアラブル端末データの取得可能性、装着継続可能性、データの妥当性について調査した。ウェアラブル端末は、研究で使用されている実績があり家電量販店で入手可能な製品Aを選択した。製品Aは腕に装着しアプリを操作することでデータが容易に取得できる。スマートフォンの操作が可能な者にとっては、自分のデータが可視化されることで自身の体調に関心が向くと捉えていたが、スマートフォンなどを使い慣れていない高齢者にとっては操作の難易度が高く、多くのサポートを有した。開始時に設定しても、誤操作やアプリがアップデートされることでウェアラブル端末とアプリが連携できずデータが送信されなくなることも生じた。また、高齢者は皮膚が脆弱であるため、連続使用により皮膚の発赤や掻痒感がみられる者もいた。その他の課題としては、ユーザー自身がアプリと同期をしなければ遠隔でデータが取得できず、タイムラグが発生することもあげられた。 高齢者には環境設定やアプリケーション側の保守で難易度が高く、市販のウェアラブル端末を使用した遠隔支援プログラムの実現には、相当の人的サポートを要することが判明した。しかし、ウェアラブル端末のデータは、データ送信をすることができれば、分単位で得られるため、変化点検知や時系列解析に耐えうるデータ量の確保は可能であることが示された。高齢心不全患者の療養生活の管理を支援するために入手容易なウェアラブル端末での遠隔支援を検討したが、様々なユーザーを想定した市販のウェエアラブル端末では限界があり特定の対象者に応用的な使用をするためには今後も検討が必要である。
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