研究計画では,市民救助者のBLSを支援するスマートフォン・アプリケーションを開発し,より使いやすいアプリケーションに作りかえていくことを一番の目的として研究を実施した。その過程において,スマートフォン・アプリケーションの開発および改善においては,研究成果を活用して行うこと,また,タブレット端末等でも使えるようにアプリケーションの開発を行うことも併せて行った。 開発の結果,BLSを支援するアプリケーションの内容はBLSの実施方法を教えるだけでなく,救助者の置かれた状況に合わせた行動を指示するこれまでにない機能を持つ成人向け BLS 支援アプリケーションができあがった。また本研究によって,タブレット端末等でも使用することのできるアプリケーションとなり,使用する対象者やBLSの技術を学ぶ機会が増えたといえる。 開発したスマートフォン・アプリケーションの改善については,非盲検化無作為化比較対照試験によるスマートフォンの効果検証研究によって改善点を抽出している。この本研究の目的は,BLSを支援するスマートフォン・アプリケーションの使用者はスマートフォン・アプリケーション未使用者よりも適切な胸骨圧迫が実施できるという仮説を検証することであった。そのため研究参加者を2群に分け,使用する群の参加者はスマートフォン・アプリケーションを用いて,医療用心肺蘇生マネキンへの胸骨圧迫技術の評価を行った。A社社員13名を対象に実験を行った結果,胸骨圧迫の開始合図から2分間の胸骨圧迫までに要する時間に有意な差が認められ,アプリ使用群の方が未使用群よりも長い時間を要していた。また,胸骨圧迫時の圧迫解除の適正率において未使用群の圧迫解除率の方が高い割合であることが分かった。研究結果からはさらなる改善の項目についての情報を収集することができた。
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