研究課題/領域番号 |
16K15918
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤田 和佳子 北海道大学, 保健科学研究院, 助教 (10732753)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分娩モニタリング / 胎児モニタリング / 胎児心拍 / 発展途上国 / 聴診器 / 新生児死亡 |
研究実績の概要 |
初年度の目標は「発展途上国の臨床現場の実情に合った胎児モニタリング機器のコンセプトを立て、試作品を作成する」である。 まず、JICAの行う母子保健の本邦研修に参加した帰国後の研修員19名に対して、メールを通して各国の胎児モニタリング機器の使用状況と課題に関するアンケート調査を実施した。その結果、使用される胎児モニタリング機器は2つのレベルに分けられることが明らかになった。1つ目は、主にアフリカ諸国や一部の東南アジア地域(フィリピン等)で、ピナード型聴診器(通称トラウベ)を主流としたローテクの聴診を行っている地域、2つ目は超音波ドップラー型胎児診断装置がほぼ普及しているが、数が十分ではない地域に二分できた。機器の開発を担当する企業と協議の上、まずフェーズ1として、ローテク機器を使用する地域をターゲットとして、マイクロフォンを使用した胎児心拍聴診器を作成し、超音波ドップラーよりも安価であり、かつ心音がスピーカーで聞こえる聴診器を作成することとした。 平成28年10月に北海道大学大学院保健科学研究院倫理審査委員会の承認(研究課題名:発展途上国向けスマートフォン連動型ドップラー胎児診断装置の開発-フェーズ1:マイクロフォン式胎児心拍聴診器の開発)を受け、平成28年11月及び平成29年3月に助産院と病院にて計50名の妊婦の協力を得て、作成したマイクロフォン式胎児心拍聴診器の試作機の性能調査を実施した。性能調査で得られたデータにより、使用するマイクロフォンの感度、アンプの増幅度、信号処理での周期検出の可否、について検討が可能となった。 なお、平成28年1月11日に、インドのマニパル大学看護学校主催の国際学会にて研究に関する発表を(研究の背景とコンセプトを中心に)行った。参加者の意見から、インドでも、分娩モニタリングの質の確保は重要な課題であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度実施計画の「①既存の医療機器の情報収集」及び「②産学連携による試作品の開発」は予定通り達成することができたが、「③パイロット調査地の選定及び現地調査の承認申請手続き」に関しては、スーダン、タンザニア、ザンビア、インド、など幾つかの候補地を検討している段階であり、確定はしていない。候補地の決定と申請手続きについては、機器の改良の進捗と合わせて、今後進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
①マイクロフォン式胎児心拍聴診器の改良と試作モデルとしての搭載内容・デザイン等の決定 性能調査の結果から改良をし、電源やスピーカーの搭載、形などの最終的な決定を行っていく。企業を訪問し、協議を重ねながら検討をする。あくまでも低コストに抑えることが重要となってくるため、適宜、発展途上国の実情をよく知る現地の医師や助産師の助言を聞いていく。 ②試作機を用いたパイロット調査の実施に向けた具体的なスケジュール調整 現段階で最も実現可能性として高いものは、自宅分娩を担うスーダン・ハルツーム州の村落助産師に対して、胎児心拍の聴診に関する研修とセットにしたマイクロフォン式胎児心拍聴診器の試作機の導入である。これに関しては、関係するNPOと協議をしていく。その他の候補地域(ザンビア、タンザニア、インド)は、現地のコンタクトパーソンと連絡を密にし、実現可能性を探っていく。パイロット調査地の決定に伴い、それに必要な倫理審査などの手続きを進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
試作機の性能調査を3月30日まで行っていたため、旅費の精算に調整を要した。ある程度の残額を見越して使用額を調整した。
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次年度使用額の使用計画 |
企業との協議に伴う旅費(交通費:大阪-和歌山間)として使用する。
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