日本の母乳育児率は約50%と低率であり、母乳育児のための乳房管理(ケア)の見直しが求められている。現在、母乳育児支援のための乳房管理は助産師が行っているが、その乳房の評価は症状や主観的評価によるもので正確性に欠ける。そこで、超音波検査(エコー)を用いて客観的で正確な乳房の評価方法を明らかにする。そのために、以下3つを明らかにするために研究を実施した。1)乳汁分泌の促進のための妊娠・産褥期の乳房管理におけるエコーの有用性の明らかにする。2)乳汁分泌不足や乳腺炎の程度とエコーの画像所見との関係を明らかにする。3)乳汁分泌不足や乳腺炎時の乳房ケアの効果を、エコーを用いて評価する。 結果:非妊婦女性、妊娠各期の妊婦、産後の女性の乳腺および乳管の生理的変化をエコーで調査し、特に妊娠中期から乳腺の肥厚、乳管の拡張が見られ、妊娠経過にともない増大することが明らかになった。乳腺炎時では、局所的な乳管の拡張が明瞭にみられ、乳腺ではエコー画像の減衰が示され、乳腺炎によって乳腺が硬くなっていることがエコー画像でも明らかとなった。乳腺炎ケア後では、乳管拡張は縮小した。一方で、乳腺の肥厚の減少は軽度であった。しかし、画像上で減衰が減少し、深層組織がやや明瞭となり、硬さが軽減したことが示された。乳腺炎ケア前後の乳房の硬さの変化は、助産師の触診と一致していた。しかし、乳腺炎による乳管の拡張について、1事例では、施設の異なる助産師の触診において、その硬結が乳管であるかは判別できず、エコーにて明らかとなった。触診では分からないことがエコーでは視覚的に明らかとなり、母乳育児支援には有用と考えられる。また、副次的な結果として、乳腺の変化を母親が視覚的にみることで、母乳育児への自信、乳腺炎後のケアの変化を視覚的に行え満足度が上がっているようであった。今後症例を増やして更なる検討が必要である。
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